第3話
それから数分後、目に見えない巨大船が地球に着陸し、山に溶け込んでいった。
山に溶け込んだ船から、目に見えない透明な小型艇が発進し、移動したエネルギー源の近くへと移動、音もたてず着地する。
ハッチが開き、中から五人の人物が降りてきた。どうやら捜査隊のようだが、見た目は……なんというか、近所のおっさんだ。
おっさん五人は山道を降りているが、なにやら驚いているようだ。
「見ろ! この道、舗装されてないぞ! けもの道だ!」
「木だ、木がこんなに沢山あるぞ!」
「うぷ、なんだこの小さい飛び回っている物は。はっ! まさか昆虫か!」
「水だ! 水が地面を流れているぞ!」
「何だこの音は……この星には何が住んでいるんだ!」
音の正体はセミの大合唱。どうやら自然とかけ離れた星に住んでいるようだ。
おっさん五人がギャーギャー言いながら山道を降り、水たまりにジャンプで飛び込んだり石けりをして遊んでいる。知らない人が見たら異様な風景だ。
この五人、この星の人間に見つかったら完全にアウトだ。
「はっ! いかん、対象を探さないと!」
「そうだった。えーっと、ほ、ほーせき? ほーせきってなんだ?」
「ほーせきっていったらアレだよ、ほらアレ」
「確か文献によれば、キレイな石らしいぞ」
「キレイな石? そんなものが必要なのか?」
「オレさ、ほーせきを探しに来るの何回目だろう。全部外れだったよ」
「そうなのか? 宇宙を支配する力を持ってるんだろ?」
「そもそも宇宙を支配する力の反応が、宇宙のあちこちにある事がおかしいだろ?」
「それもそうだな」
「どうせ今回も外れだよ。適当に遊んで帰ろうぜ」
五人ともうなずいている。どうやら士気はとても低い様だ。
五人は観光気分で近くの街を歩き回り、遊び疲れて一日が終わった。
深夜、大地の家に何者かが侵入した。
まるで暗闇に溶け込んでいるように姿が見えず、注意して見なければ気がつく事はないだろう。
大地が乱暴に開けて、建付けが悪くなったガラスの引き戸を音も立てずに開け、げた箱を開けて手を入れる。
(ない……どこ?)
家に上がり込み、順番に部屋をまわり始めた。
翌日も朝から街に行こうと船から降りてきおっさん五人組だが、ここで異変が起きたようだ。
「おい大変だ。対象の反応が近づいて来るぞ」
一人が、何かを操作しながら残念がっている。
「マジかよ、俺もっと遊びたいよ」
「でも仕事だしな、しかたない」
「あ~あ、観光も一日で終わりか」
「でもどうして近づいて来るんだ? 石だろ?」
顔を見合わせるが理由は分からない。
「とりあえず対象に接近しよう」
うなずいて歩き始める。
そして間もなく対象と接触する距離になる。
「おい大地、穂花ちゃんと離れすぎじゃないか?」
「いいんだよ、ほっときゃ」
元気な子供たち三人が自転車に乗ってすれ違う。
「おにぃちゃん、まってってばー」
少し遅れて、息を切らせた少女がゆっくりと自転車で山道を登っていく。
「あ、あれ? 離れていく」
何かを操作していた男の言葉で四人は振り返り、すれ違った少女を見つめた。
「あの子が!?」
「分からない! とにかく追いかけるんだ!」
慌てて少女を追いかけるが、なにぶん自転車がゆっくりなのですぐに追いついてしまった。
すぐ後ろに付いて、自転車と同じ速度で歩く五人。
(間違いないのか?)
(ああ、俺達と同じ速度で移動している)
(じゃあ仕方がない、捕まえるぞ)
ヒソヒソ話しも終わり、いよいよ少女をとらえようとした瞬間!
「ほのかになにしてんだー!」
大地がドロップキックをぶちかました。
直撃を食らった男は地面を転がってノビてしまう。
「な、なんだ貴様は!」
ノビた男から目を離して、一人が大地に詰め寄ろうとする。
「えい!」
山道の脇、木の陰から掛け声がすると、男は顔面から地面に転んでしまった。
タカシが木のツルを使って足を引っかけたのだ。
「なんだ!? なんなんだ一体!」
「子供の分際で!」
残った三人がツルを踏みつけて、穂花と大地を捕らえようとする。
が、今度は頭上から大小様々な木の実が落ちてきた。
「いたたたた! なんだ! トゲ、トゲだらけだ!」
どうやらセキが木に体当たりをして、木の実を落としているらしい。
栗も入っている。
「この……! ゆるさんぞ!」
かろうじて動くことのできる最後の一人が、大地をとらえようとする。
しかし大地は冷静に木の近くに行き、Y型の木の枝を拾う。
「ほのかを狙うヘンタイめ! これでも食らえ!」
Y型の木の枝で蜂の巣をはさみ、男に投げつけた!
※危険ですので真似しないでください。
蜂の巣は見事に男に命中。そして……蜂に襲われるのだが割愛。
蜂の巣をツツいたら、いや巣をぶつけられたらツツいたどころの騒ぎではない。
ひたすら逃げまくる男を助けに、大地にドロップキックを食らった男が何とか立ち上がり、手を貸しながら順番に撤退を始めた。
「どーだ! 見たか俺達のれんそープレイ!」
「だいちー、蜂の巣はやめよっていったのに」
「おにーじゃーぁ~ん! うわーん! こわがっだ~!」
「あいつら何者なんだろう。あと連係プレイな」
流石の大地もこのまま遊ぶ気が起きず、みんなで家で遊ぶことにした。
家への帰り道で、ある女性に出会った。
「ゆっこ先生ー、おはようございます」
「あら穂花ちゃん、おはよう。今から遊びに行くところ?」
ゆっこ先生と呼ばれた女性、年のころは二十台前半、肩より長い黒髪を三つ編みにして肩に乗せ、黒縁メガネをしている。身長は百六十ないだろう。スレンダーなので背が高く見える。
「あ! 先生おはよー」
「先生おはようございます」
「せんせーおはよー」
「はい、おはよう。遊ぶのはいいけど、ケガをしない様に気を付けてね」
先生も自転車に乗っているが、前のカゴには教材だろうか、本が沢山入っている。
「うん大丈夫! おにーちゃんが助けてくれたから」
「助けてくれたって、危ないコトしたの!?」
「え? えーっと、おじさんにへんな事されそうになったの」
「なんですって! へ、変質者? ロリコン?!」
「先生おちつけって、俺達がれんちゃんプレイで追いはらったからさ」
「だから連携プレイな」
「なんだか誘拐でもしそうな感じだったなー」
「ゆ、誘拐犯ですって!? けっけけけ警察! えっと警察は119番だっけ?」
スマホを取り出したが、番号が思い出せないようだ。
「110番です先生」
「百頭番?」
「せんせー、なんかちがう」
まだ若い先生だからか、トラブルの対処が上手くいかないようだ。
何とか生徒たちの協力? を得て、警察に連絡し、周囲の警戒を厳重にすることになった。
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