2021-01-27

俺は何か才能がなかった訳じゃない。

圧倒的なハンデをもってこの世に存在している訳じゃない。

俺の人生は、君達から見ると、きっとそんなに悪くない。

これからの努力次第で、如何様にも変化することが出来よう。


だが、社会に向いた人間になることに、

生み出すものの一切が世間体を背景に持つ様になることに、

一体何の意味があると云うのだ。

人間に価値を見出す人間に、一体何が創れると云うのだ。


俺はそんなものになりたい訳じゃない。

人間に依らぬ価値を見出さなければならない。

人間に依らないものにこそ、本当の美しさが在る。

そしてそれこそが、俺が月明かりと形容したいものだ。


今の俺には、己の思想を承認し得る存在が分からない。

拠り所がなくては、一貫した思想など抱けぬと思っているから、

それを見つけなければならない。

それを見つけるまで、「月明かりを探す」ことが俺の思想の支柱だ。

精神を其れで以って支えて行かねばならない。


人生の大部分を、人間になることの為に使ってしまった。

これからは、人間に依らぬよう、注意深く生きたい。

果ては、人間などに心底価値を感じぬ様になりたい。


最早尊敬にまで達してしまった彼に対する感情を、

増長させてはならない。

これ以上、彼の人柄や背景に興味を持つのはまずい。

俺はそう云った人間に傾倒しやすいことが自分で分かっている。

俺には、俺にしか吐き出せない言葉があるはずだ。

例えそれが彼の云う紛い物だったとしても、

彼の云う様にそれらを組み合わせるのは俺の自由だ。

生きてしまって居るなら、何か言葉を、作品を創るべきだ。


きっと誰かに認められたいという俺の自尊心も、

そのまま作品に変えてしまいたい。


言葉が世界だと云うなら、世界はいったい誰のものだ。

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