2021-01-23

人生について、俺の探す月明かりについて、少し考えたことがある。


結局、人間として生きる限り、その人生で万人に受け入れられる様なものは得られない。

どの人間も、その親近とするところのみに通づる我儘を信念としてゆく。

その信念を貫く、形成する過程で、何を精神の依代とするかが、

モチベーションそのものとなる。


その依代は、大別すると人間かそれ以外かだ。

人間が好きな人間には、依代を人間とする。

だから、人間社会に於いて能くあることを望み、それが世間体だ。

仕事をし、家庭を持ち、子を授かるという極めて世間的な幸せを望んだりする。


一方で、人間以外を依代とする者だって居る。

彼等は、人間によって傷つけられた、一般的に云うところの社会不適合者であることが多い。

彼等は、人間なんぞを信じない。

例えば音楽、例えば神様。人間に依らぬものが彼等の精神を支える。

往々にして社会不適合に見えるのは、彼等が社会に認められることなんかに

価値を感じていないからだろう。


共通しているのは、どちらも己を肯定する存在をどこかに据えていると云うことだ。

その場所が違うだけだ。

人間は、利己的なものを排除できない。

ただ、依代が違うだけでこうも在り方が変わってくる。

俺は、後者の方が圧倒的に綺麗だと思う。


俺が今、大いに悩んでいるのは、その依代が不安定だからだ。

悔しいが、俺は人間が好きなようだ。

認められたいと思うことがよくある。

つまり、依代が大きく人間側に寄っている。

しかし、彼等の音楽に触れ、貴方に触れ、人間に依らないものの美しさを識った。

そして、それを依代として生きる強さを識った。

愚かにも、中途半端な分際で、その思想に近づこうとした。

だが、根底にある思想というのは、中々変わらない。

宙ぶらりんな思想に振り回されているのが、現状だ。

依代のない思想など、何を言っても空を切るだけだ。

ふらついた批判など、誰に言っても虚しいだけだ。


これから俺が見つけなければならない、

「人間に依らない」依代こそが、月明かりだ。

月明かりを探すとは、依代を探すことだ。

もう決して人間に振り回されぬ様。


最早、幸せになりたいと云う欲求は、世界共通のものだ。

それを否定すると、大切な人が悲しんで仕舞う。

俺が元来抱いていた、幸せにならないと云う思想は、許されないものだった。

幸せになれない俺では、貴方を幸せにすることは叶わないらしい。

だから、少しでも人生を前進させていいかもしれないと思えるような、

そう思えるようなものを見つけたい。

人間は、独りでは生きてゆけない。

喪いたくない、幸せで在って欲しい人が居る。

他人を排する利己を、その利己を支えるものを。


人生をかけて、月明かりを探すのだ。

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