第28話 二人の少女と魔法の出会い
「ご主人様! お怪我はございませんか!?」
アルゥが駆け寄り、俺の胸に飛び込んで来る。
「大丈夫だよ、アルゥ。この通り無傷だ」
「申し訳ございません。敵の攻撃を許してしまいました。……ご主人様にもしものことがあったら……」
アルゥはわかりやすく
「ごめん、心配させて」
「……あのうぅ。わたくしがいるの、忘れていらっしゃらない?」
その様子を腰に手を当て、
「レカさん。この度は私のご主人様を守って頂き、ありがとうございました」
そういってアルゥはペコリと頭を下げた。
「私のって……。別にあんたのためじゃないわよ。死なれたら、わたくしが困りますので。なにせ、わたくしのクエストを受けた、わたくしの! 同行者なんですから」
二人は、笑顔で向かい合っているが、放たれるオーラは喧嘩そのものだった。
◆
洞窟への入り口は、明らかに人工的に作られたものだった。
「ここが入り口か」
「ええ」
床と壁面が平らに
「……飛び降りるしかない、か」
急いで出てきたのが仇となったか、と思ったが、そもそも縄をかけられそうなところも見当たらない。徹底した対策だ。高さもそこそこあり、着地によっては捻挫――この世界では捻挫がないから、着地ダメージを受ける――してしまいそうだ。
「じゃあ、わたくしが」
そうこうしている内に、レカがスカートの裾を持って、俺の側まで来ていた。そしてまさに飛び降りようとしている!
「え、ちょっ――」
「とっ」
危ない――!
と思ったが、レカの体は急降下することなく、ふわっとゆっくりと降下していく。
レカの背中には翼のようなエフェクトと、足首には渦巻のようなエフェクトが表示されている。風が彼女をサポートしているのだろう。
「早く降りてきなさいよー!」
奥の入口まで降りたレカは振り返り、こちらに手を振っている。
「……便利なもんだな」
あの風の翼さえあれば、
――しかし、俺のスキル欄には、あんなスキルは無かったぞ。彼女がランク1だと言うなら、俺も習得できそうなものだが――
「私達も、参りましょうか」
「そう、だな」
「お気をつけて」
アルゥはそう言って身軽に飛び降り、音もなく着地した。
一方俺は――
「とう――っいだ!」
派手な音を立てた上、落下ダメージを受けた。アルゥに優しく介助されながらも、内心は恥ずかしくて死にそうだった。
◆
洞窟は天然と人工の
「道が分かるのか」
「なんとなくよ」
「……ものすごく不安だな」
「露骨に不安になるの、辞めてくれるかしら」
そういうとレカはこちらに振り返り、手のひらをかざした。すると、手のひらの上に小さな風の渦が発生し、それが洞窟の奥へと消えていった。
「風が教えてくれるのよ。この風は、ユーリィンの匂いを覚えているから。この先に、彼女がいるんだって」
そして再び歩き始める。俺とアルゥは顔を見合わせ、それについていく。しばらくして、レカが語り始めた。
「……さっきの話なんだけどね。ユーリィンがティアールカ家に来たのは、わたくしが四つになった時だった。両親と年の離れた姉上は、わたくしが物心ついた時から仕事で忙しくて。わたくしを一人にさせないようにと、父が」
途中、人骨があった。かなり前に亡くなったのだろう。それに眉を潜めたレカだったが、それでも足取りは進んでいた。
「同い年だったわたくし達はすぐに仲良くなったわ。初めてできた友達に、わたくしは嬉しかったの。たくさん遊んだわ。そして、身の回りの世話もしてもらった。そんな時、わたしは見てしまったのよ。――彼女が魔法を使っているのを」
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