ホラーの「異世界」は普段の日常に微妙なズレがあって、そのズレが不気味で「なんだここは」と違和感を拭えない怖さが楽しめます。
「ご本人登場…しない怖い話」の企画に参加してくれた『黄昏小路』は空間に対して恐れを感じるホラーです。「異世界系」のホラーは、①ひょんなことから異世界に行きました→②なんだここ。気持ち悪い→③無事帰還。がテンプレートなので、無事が確認できるだけに安心して読み進められます。
異世界系の醍醐味といえば、②の見知っている日常にはっきりと浮かぶ不気味さだと僕は思います。どれだけ不気味なのか読者に伝えることが重要です。
ホラーがダメなあの人に感想を求めると「誰かの夢を眺めているようだった」と言っていました。具体的に書くと「主人公が慌てている状況は理解できたけど、感情移入はしなかったから淡々と読めた」だそうです。
主人公が迷い込んだ異世界はどうだったかときくと「そんなに怖くなかったから、読みやすかった」と安心していました。
「もし読者に主人公のハラハラした気持ちを伝えるような作風だったら、読むスペースが遅くなっていた」。そういえば、主人公の感情がたくさん書いてあったのに、僕もあの人も主人公に共感しませんでした。感情移入ができなかったことで読みやすさにつながったようです。