第3話
裏路地をでて通りについても男達は気にする様子もなく私を引きずる。道を歩く娼婦は同情の目を、上界からきた男達は蔑みと好機の目を私に向けた。
こんなことはここでは日常茶飯事。
明日食べる飯もない、腐りかけのものしか落ちていない。若い女は娼館に連れて行かれ、男は労働のために売払われる。金持ちは遊びで金を撒き、地を這いつくばり群がる人をあざ笑う。撒かれた金がこの国で一番価値が低い硬貨だと笑いながら。
墓場と呼ばれるこの街は腐りきった場所だった。
「いたぃ、やだ……、離してっ!!」
鼻水と涙と痛みから出てきた吐瀉物。そこに泥や砂が顔に張り付く。見るに堪えない状態で見世物のように引きずられ、私の心はボロボロだった。
何度か誘拐されそうになったこともあったが上手く切り抜けた。それなのに今回は逃げ切ることができなかった。ただそれだけ。
「おい、足の方持て。中に入れるぞ」
「へいへい」
気だる気な返事と共に近くを歩いていた男の仲間が傷だらけの私の足を持ちあげた。ぶら下がる形で運ばれる私の体。ブチブチと何本も髪が抜け、頭皮が引っ張られる感覚に目が回りそうになる。
引きずられていたから平気だった下半身は持ち上げられたことで服も全て下に落ち、ガリガリに痩せこけた足と汚れた下着が顕になった。
「おい、このガキ太もものあたりになにかつけてるぞ」
「金目のものなら山分けしようぜ。どうせ後で身ぐるみ離すんだ、どさくさに紛れてくすめるか」
「そりゃあいい」
汚い笑いは気味が悪く、取られないために痛みに揺れる頭で策をねった。この重だけは誰にも渡したくはない。
しかしときはすでに遅く、何かの建物に入ったかと思えば私は男たちに捨てられるように薄暗い物置の角に投げすてられていた。
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