第2話
逃げなければいけないのは分かっているのに体はもう自分自身でどうにかできるものではない。
「手間かけさせやがって、このクソガキ」
捜索をしていた何名かの男はガタイがいいものばかり。その中で唯一腹が出てどっぷりと太った男は苛立ったように私にツバを吐いた。
そして豚の足のように丸々とした下半身で2、3発私を蹴り上げると後ろに控える部下を睨む。偉そうな態度は見ているだけでも反吐が出るものだった。
「早く娼館の方へ連れていけ」
「了解しました。ただ売れますかねぇ、こんな傷だらけで汚いガキ」
「そういう趣味のお客様ならいくらでもいる。暴れるのなら薬を打てばいいだけだ。いいからほら、早く」
太った男はそう吐き捨てると私の方をチラリと見て、すぐに通りの方へ歩いていった。残された男達は面倒くさそうにため息を吐くと何発か私の腹を蹴り上げる。
胃からせり上がる吐き気と血の味、軋む体に言葉なんてでない。しかし悶絶したところで助けてくれるわけじゃない。せめてもの防御で腹を守るように大勢を変え丸まれば重い銃が私の体を押しつぶした。
「ったく、逃げんじゃねぇよ。ここは墓場なんだから諦めろ。身寄りもない女なんてみんな娼館行きだ」
一人の男は私に告げるとおもむろに髪を掴み麻の袋の上から私を引きずり下ろした。
「いっだぁあい、やだぁあ、ゔぇ、ぃっ…」
「うっせえな、黙れよ」
そしてそのまま荷物を引きずるかのように私の髪を持ったまま進んでいく。全身を打った体は動かすだけでも悲鳴を上げ、男が前に進むたび道に落ちた石やガラス片が容赦なく私の皮膚を傷つける。
激痛が絶え間なく私を遅い言葉から何まで飲み込んでいった。
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