いつからか好きになっていました…2
教室に戻ると僕の周囲には女子生徒が数人いた。晴乃の容態とかをきかれても本当のことはなにも言えやしない。それだけに鬱陶しくて仕方ない。
けれど、彼女らはもっと鬱陶しいことに僕と晴乃が付き合っていると思っていた。違うと口にしても中々信じてもらえることもなく、結局は福森さんに助けてもらった。
とはいっても、福森さんも「付き合ってはないんじゃん?」としか言わなかった。まあ、その言葉一つで女子つまらなそうに席に戻って言ったのだからファインプレーだ。
そう思っていた。いや、思っていることに間違い事態はないのだが、少しばかり変だとも思った。
何が変なのかって?
福森さんは僕を避けている気がするから。たったそれだけだった。お礼をいっても返事などはなく、遠退いていってしまった。
何よりも変なのは、僕が福森さんを放課後の教室に呼び出してしまったことなのかもしれないが。
僕は福森さんと話す時間を作って何を言いたいのだろうか、何を言わなければならないのだろうか。
晴乃の本当の現状を伝えなくてはいけない。いやそんなこともないだろう。
それなら、なぜ呼んでしまったのか。福森さんはなぜ僕を無視するのに呼び出しには答えてくれたのか。
そう考えているだけで時間は進んでいて、僕の心拍数が上がっていくにつれ時計の短い針は三を指そうとしていた。
そして時計の針が午後三時を指した途端に、教室からは一人、また一人と出ていった。
朝から別室だった僕は知らなかったが、今日はもともとホームルームをしないと言われていたらしく午後三時になったら解散らしい。
たったの五分程度で教室は僕と福森さんの二人だけになった。だから、僕は席をたち福森さんの元へと歩み寄った。
福森さんは教卓に寄りかかり黒板を眺めていた。実際黒板を眺める意味などないのだから、きっとボーッとしているだけだろう。
「呼び出しに応じてくれてありがとう」
「いや、私もなんとなく話しあるし」
なんとなくで話されることにはかなり興味があるが、まずは僕から話すべきなのだろう。
何も話すべきかなんてまとまることもなく、まばらにちらばった単語を結ぶように僕は言葉をつなげた。
「日暮晴乃と約束した。僕と晴乃が互いに真逆の道を進んだ先でまた会おうって…。だからしばらくは僕も頑張ってみようと思う」
「具体的には?」
「え?」
「具体的には何を頑張るの?」
そう問われたときに思い浮かぶものが一つだけあった。それは今朝と同様に他人からすればふざけていると思われるかもしれないようなものだ。
「まずは友達百人。とか?」
すると、福森さんはふっと笑っていた。それからすぐに僕の意見を否定し始めた。
「それはやめた方がいいよ。杉咲には分からないかもしれないけど数だけの友達よりも必要なのって二人としていない唯一無二の友達数人だからさ。一緒に泣いたり喧嘩したり、傷つきあって拭いあってすれ違って、それでも一緒にいたいと思える一人をまず見つけなよ。それがきっと親友だから」
あー、そういう類いなのか。不覚にもそう思った。
「じゃあ、福森さんは僕の一人目の親友だね。いま福森さんが言ったことって意味分からないけど、福森さんを重ねてみると納得できる。福森さんならどれだけの喧嘩をしても関わり続けたいって思えるよ」
こういった、軽率な発言は時に女の子を傷つけていると僕はしらなかった。
だからといって許してもらえるとは微塵も思わない。
そもそも、この時の僕自身は福森さんを傷つけていることにさて気がついていないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます