真実は突然に4
しばらく三人で談笑した。いや、僕は笑ってなどいないのだから談笑とは言わないだろう。それならなんと言うべきか、考えることすら面倒臭くどうでもいい。
午後三時を過ぎた頃時子叔母さんは仕事に向かった。
病院のヘルパーというのは出勤時間が遅く帰りも遅いらしい。全部がそうではないのだろうが時子叔母さんは比較的そういった勤務をしている。
時子叔母さんが玄関へ向かい、家のドアが閉まる音がした。日暮さんは笑みを浮かべたまま僕に話しかけてくる。
「ねえ」
「なに?」
この時既に僕の機嫌はそこまで悪くなく、優しく言葉にしていた。と思う。
日暮さんは照れるように視線をそらしながらも小さな声で呟いた。
「楓君の部屋見せてよ」
「あー、うん。階段上がって右の通路の突き当たりにあるよ。ドアに名前書いているからわかると思うよ」
「え?行って良いの?てか、私一人で行くの?」
自分で行きたいと言っておきながらなぜか戸惑う日暮さんは本当に変な人だ。そもそも僕の部屋をみたいだなんて時点で既に変わり者だ。
「僕は生憎階段を上るのあんまり好きじゃないんだ。それに邪魔者がいない今、自室に籠る意味がない。だから一人で行きなよ」
日暮さんにそう伝えると頬を膨らませ席を立ち始めた。
「エッチな本とか見つけたら時子さんに言ってやるからね」
「はいはい」
そういって、手で日暮さんを追い出した。階段のきしむ音を危機ながらも僕は考えた。
日暮さんに会っただけで高鳴ってしまう鼓動の意味を。
視線を向けられるとつい、目を背けてしまいそうになる恥ずかしい気持ちの意味を。
これが人を好きになることだとしても、僕が今まで感じてきたモノとはやはり異なる。
それから、一番気になるのは妙に痩せ細った彼女の身体。
前々から肉のついている体型ではなかった。でも、細いと感じさせるほどまでに痩せてなどいなかった。あの身体が学校を休む理由と直結しているのだろうか。
病気…。まさかね。
いつまでも一階へ降りてこない日暮さんが流石に気になってしまい、僕も自室へと足を運んだ。自噴の部屋なのだからノックはせずに勢いよく開けてしまった。
思っていたよりも日差しが強く入っている自室に多少目が眩む。それからほのかに香る甘い匂い。
僕の部屋にただようのは日暮さんの匂いだ。下心がないなんて言えば嘘になるだろうが、今だけは本当に下心なんてない。
なぜなら僕のベッドに腰かける日暮さんは泣いていたから。
その涙の理由を僕には聞く勇気がない。
学校に来れないのと身体が痩せ細ってしまったことは関係があるのかなんて質問をするほどデリカシーのない人でもない。
僕は君が大病と闘っているかもしれないと思える程に強くはない。
だから、強く願う。
当たり前がいなくなりませんように…と。
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