バタフライエフェクト。
一匹の蝶が葉に留まっている。
その姿をスケッチするのが好きだった。
いや、最初は別になんでもよかった。
あまりにも稚拙な出来だったその絵を、母さんは褒めてくれた。だからぼくは蝶を描くのが好きになった。
ーまるで本物みたい!
上手な蝶の絵を描けば、母さんが喜んでくれる。
だからぼくは蝶を描き続けた。
ーごめんね、お母さん大切な話してるから
母さんが忙しくなっても。
ぼくは蝶の絵を描き貯めていった。
いつでも母さんに見せられるように。
蝶の絵が部屋の壁を埋め尽くした頃。
これを母さんに見せてあげよう。そう思った。
どんどん元気をなくしている母さんを喜ばせるかもしれない。
本当に僕はそう思ったんだ。
ーお母さん、結婚なんてしなきゃよかったのかなぁ
蝶が飛ぶ。
その軌道は僕が見てきたどんな蝶よりも稚拙なものだった。
外には雪が降っていた。
もう蝶が留まる葉なんて、何処にもない。
(暗転)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます