直径数メートル。

自分の背丈よりも僅かに短い両手をめいっぱいに広げても、満たされないほどに世間は広い。


ラジオ体操が気兼ねなく出来てしまうくらいには自然と出来てるソーシャルディスタンス。白い布で隠さなくても見えない表情。

霞む存在意義を一度洗い流して深呼吸。荒くなる息を整えると無性に走り出したくなるくらいにはまだまだ子供で。


今度は切らないように準備運動をしてから頬を叩く。不格好だろうなと自分を嗤ってから一歩踏み出す。

ひとたび走り出してしまえば。前を向いてしまえば。滲む視界にぼんやりと何かが映りこんだ。


あぁ、案外世間は狭いみたい。



(暗転)

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