都会の空。

片耳に流れ込んでいたプレイリストが途切れて、疎かになっていた感覚がひょっこりと顔を出す。

さっきまで気にも留めていなかったはずの感覚を五感は過敏に感じ取る。

街の喧騒、生ぬるい風、体の気だるさ。慣れない感覚が隙間から入り込んで皮膚をピリピリと刺激する。居心地が悪い。


ふと空を見上げる。

ビルで出来た山頂の上にはぼんやりと紅い霧がかった空。

飲み屋街の空は大量のネオンライトのせいでどうやら星どころか月さえも見れないようだ。


「どこの世紀末だよ」


口からついて出たのは想像でしかないたとえ話。しかしその言葉も原型をとどめることなく都会の夜に霞んで消えた。



(暗転)

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