傷もの。

ーそれって好きってことじゃん!


心の底にゴトッと落ちた黒い塊。

信頼して相談したのに。私の悩みなんてなかったことのように笑い飛ばされた。


「そうなのかなぁ!」

「絶対そうだって!」


けらりと笑って見せるがどうしても困り眉は直せない。でもあの子は表情なんて気にしていないから、別にそこまで気を配らなくてもよさそうなんて気が付けるようになったのは最近のことだ。


ー美人だってことだよ

ー人気者だなぁ

ー逆にいいじゃんそれ!


私の不幸は誰かにとっては幸福らしい。私にとっては一生消えない心の傷なのに。みんなはそれを羨ましがる。


ー欲しいなら…いくらでもあげるよ


この顔も体形も声も全て。傷ものだなんて文句は言わせない。

だってあなたたちが求めたんだから。



(暗転)

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