姉の人格。
格好いい女性は素敵だ。
まぁ格好いい人は男女問わずに素敵ではあるのだが。
「で、格好いいと言われたいと」
力説するのはお世辞にも格好いいと言えるようなタイプではない私の姉。私の姉は少し前から格好いい女性に憧れている。多分今期のドラマの影響だろう。
「目指せばいいんじゃない?」
「だから頑張ってはいるんだけどね?」
こてんと首を傾げて唇を尖らせる。その仕草は決して嫌みったらしくなくて、流石しばらく恋愛ドラマに憧れていただけあるなと思う。
姉はよくも悪くも影響を受けやすい人間である。
先の可愛い現象もそうだが、姉は一度憧れたものには徹底的に憧れて追及する癖がある。しかも追及してしまう癖は尋常じゃなくて、本当に憧れていたような人間になってしまうのだ。だから、医療ドラマにハマった時は勉強嫌いなはずなのに、勉強しすぎて最終的に校内1位になっていたし、刑事ドラマに憧れた時は当時有名だった連続窃盗犯を捕まえてしまったこともあるくらいだ。超能力者に憧れた時にサイコキネシス的なものが一瞬出来た時は姉が人外であることを疑った。
姉はその性格のせいなのかよく私の姉は多重人格者に間違われる。しかし今までの姉をまじかに見ている私は分かる。あくまで姉は一つの人格で全てをやってのけてると。ここまで有言実行にとんだ人物は周りでも見たことない。一度姉には女優を進めてみたことがあるが、特に惹かれなかったようで興味すら示さなかった。これほどまでに適材なものはないと思うのだが…。
正直、私は姉が羨ましい。これだけの能力があるのに、なんで役者を目指さないんだろうとさえ思う。でも、最近私は気が付いた。姉は別に主導的に何かに成れるのだ。何かに成り代わることに理由を求める私と違って。だから姉は役者に興味を示さないのかもしれない。まぁむしろ好都合だ。姉が役者になろうかなとか言ってしまえばあっさりと抜かれてしまいそうだ。
「とりあえず髪切ろうかな」
「そうだね、ショートカットの方がいいんじゃない?」
うきうきでスマートフォンで美容室の予約をする姉を見ながら、あとどれだけ姉は人格にキャラクターを詰め込むんだろうかとぼんやりと考えた。
(暗転)
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