理想の、

私には可愛いものが似合わない。

身長も低くて童顔のはずなのに。私が可愛いものを着ると不格好でどうしても笑いがこみあげてきてしまうらしい。

小さな頃は可愛いものが似合うように努力はしてきた。いくら笑われてしまっても、私が変わればきっといつか似合うように、認められるようになる。そう信じていた。だけれど。


ーなんかお前が可愛いもの持ってるっていう事実でもう笑える


多分、悪意はない言葉なんだろう。みんなからしたらきっととても当たり前で常識。私と可愛いものは永遠に合わない。たとえ私の外見が変わっても。私という存在自体が別物にならなきゃ意味がないらしかった。

だから私は、可愛いものを追わなくなった。色とりどりのリボンも、ピンク色の低いヒールの靴も、集めていたフリルのワンピースも。全て捨てて諦めて。私に似合うものを好きになった。

好きになったのに。


ー絶対この服似合うよ!


初めて出来た友達は、可愛いに愛された女の子だった。私と違って高身長で大人っぽい顔立ちなのに、直感的に私はこの子を可愛いと思った。だからもっと可愛くなって欲しかった。洋服も一緒に買いに行って、可愛らしいカフェも彼女となら怖くない。だって彼女は可愛いんだから。私だけじゃきっとまた笑われてしまったかもしれない。


「運命の出会いってこういう風に言うんだろうな」


友人へかけていた通話を切ってふわふわとする気持ちを抑え込むように呟く。

勝手に緩む口角を引き締めながら、私はシンプルなジーンズに手を伸ばした。



(暗転)

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