ともだち。

女の子は甘く可愛くあるべき。

いつからそう刷り込まれてしまったんだろう。

いつの間にか部屋のクローゼットから革ジャンやダメージジーンズ、あれだけ集めていたキャップが消え去り、ゆるふわなピンク色が増えていた。


「今日はこれでいいかな…」


最近、鏡の前に立つのが楽しくない。大学で初めて出来た友達に合わせて始めた女の子らしい服装。私にはこの方が似合うからと勧めてくれたフリル付きのワンピース。まつ毛の違和感はいまだに慣れる様子がない。はぁっとため息を吐いた時だった。ベッドの上に置きっぱなしになっていたスマホが鳴る。


ーもしもーし!朝早くにごめんね!

「ううん、大丈夫だよ」


スピーカーになったスマホから聞こえる声はその友達。


ー今日の1限休講になったらしいの知ってる?

「え、そうなの?」


思わず教材を鞄に詰める手を止める。


ーうん、急に体調崩しちゃったらしくて

「誰に聞いたの?」

ー情報通の先輩に、今度紹介する?

「うーん…考えとく」


1限のものだけ抜きながらまた鞄にモノを詰め始める。


ーで、時間空いちゃうからカフェでもどうかなって思って

「あー」


突然のお誘いに以前彼女といった可愛らしいカフェが脳裏に浮かんだ。正直食べられる量も少ないし気乗りはしない。けれどもせっかく誘われたのに断るのも申し訳ないなぁと思ってしまう。


ーもしかして忙しい?

「ううん、大丈夫だよ行こう!」


慌てて否定すると明らかに嬉しそうな声が聞こえてきた。よほど行きたかったんだろうなぁと何となく思う。


ーじゃあいつもの駅で待ち合わせで!

「うん!」


元気に返事をすると通話が切れる音。その音を聞いて無意識に打つ向いてしまった。

友達は好き。お出かけだって楽しい。でも…


「自然体でいたいっていうのは我儘なのかな…?」


心の中に生まれた小さな疑問を呟いて、私は必要なものが詰まった鞄のチャックを閉めた。



(暗転)

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