空想で腹が減る。

「お腹空いた…」


空腹。

文字の通り、腹の中が空っぽになった時に陥る現象。それが本来の言葉の持つ意味ならば今の言葉は嘘っぱちだ。

というのもつい数分前に俺はどんぶりいっぱいのカツどんを食べたばかりだから。腹の中にはかみ砕かれてはいるもののまだ消化途中のカツと白米が所狭しと残っている…はずだ。

脳を通らないで脊髄で喋っている感覚。どうやら俺は今腹が減っているらしい。

暴飲暴食は自傷行為と同じだって最初に言い始めた人のセンスを俺は尊敬する。食べてる間はただただ幸福感に浸れるが、食べ過ぎは命にだって直結する。毒のように体を蝕む時限式の命への爆弾。

分かってる。分かってるけれど。

食べないとやってけないはデブの戯言か。

自らに甘い自分に幻滅しながらも、俺は棚に常備している菓子に手を伸ばした。



(暗転)

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