戦場。

戦場はいつだって孤独だ。


インカム越しにチーム上の仲間こそいれどそいつらは断末魔を最後に消えていってしまう。

この戦場において情けなんて枷にしかならない。それは敵だけじゃなく味方であっても。力ないものは淘汰される、それがこの世界の制約。だからこそ俺はそれに抗わなきゃならないんだ。


『お兄ちゃん、信じてるからね』


かつての平穏は俺の力が足りなかったせいで攫われて未だ囚われの身。

兄としての務めを、約束を。今度こそ俺は果たしてみせる。


ー2時の方向に敵部隊確認


雑音に紛れて指示が飛ぶ。一呼吸おいて砂埃が舞い踊る地に視線を向けると確かに人間がこれは…三人か。戦場経験を重ねると砂の踊りの規則性が見えてくる。そして人がその中に紛れると砂の規則性が崩れてしまうのだ。俺も邪魔をしている一人ではあるがそんなことどうせそんなこと分かってない連中だろう。だからあんなに分かりやすく砂と喧嘩しているんだ。


ー行けるか?


近くに仲間はいないが行くしかない。


「…了解」


俺は一呼吸おいてからそう呟き、砂の中に身を投じた。



(暗転)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る