猫と私。

私は猫が嫌いだ。


一人じゃご飯も食べられないくせにいつも偉そうにふんぞり返っているし。

私が抱っこしようとしたらひっかいて噛みついてすぐに逃げ出すし。登っちゃだめといくら高い棚から降ろしても私の目を盗んでそこでお昼寝をし始めるし。

自分はおやつ食べ終わったくせに私がおやつを食べている時にテーブルに上がってきてみゃあみゃあ鳴いてくるし。


私が深夜に眠れずにリビングに戻ると私が買ったダサい柄の猫用ベッドですやすやと寝息を立てていることがあるし。

私が名前を呼んで探していたらみゃあと鳴いてひょっこりと陰から顔を出すし。

普段は近づいただけで逃げるのに私が泣いていたら足もとに座ってそこで寝始めるし。

「大好きだよ」って言ったら「分かってるよ」というように欠伸をする。


一緒に住んでいる私のことを考えずに生きている。

自由気ままで自分勝手な同居人。


自由気まますぎて、私の元から姿を消した同居人。

寂しいって知ってるくせに。いなくなるなって言ったのに。

それでもあいつは気ままだから。言ったことも守らない。


「…せめて弔いくらいはさせてよ」


だから私は、猫が嫌いだ。



(暗転)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る