第28話

 ベッドの中に何かが入り込んでくるのを感じ目が覚める。顎の辺りにフサフサとした何かが掠り、体全体を柔らかい何かに圧し潰された。


「……レオナさんや、何をしているんだい?」


 布団を捲れば顔を真っ赤にしたレオナがこちらを見上げていた。ホラー映画であった気がする、こんなシーン。


「顔を逸らさないでください……今はアタシだけを見て……」


「一緒に寝たいのか? 仕方が無い、ここは先生が一緒に――――」


 軽く受け流そうと思っていたが呆気なく俺の唇は塞がれる。レオナとひとつにでもなった様に体が熱い。思考が真っ白になりながら、鮮明のままの自分もいる。


「――――っ、どうした……? いきなり……こんなこと……」


「その……寂しくなると……こうなっちゃうみたいです……」


「最近……二人きりって無かったな」


「そうですよ……前まではずっと一緒だったのに……キャロルやリゼさんや……ロウとばっかりで……」


 明らかに拗ねながら足を絡ませてくる。首筋に息がかかり、ぐったりと全体重を俺に預け、レオナの心臓の音が体全体を通して響く。


「告白に……答えなくてもいいって言ったのはそっちだぞー。あれは強がりだったのか?」


「強がりですよ……フラれるのが怖いから、このままにしてたんですけど……」


 甘い声色と共に首筋に噛み付かれ、何度か吸い取られてしまう。少しくすぐったく、多幸感が脳内を駆けるがそれを止める。


「なんだかんだで、駄目人間になるーとか、ダラダラするーとか言っといて、何とかなってただろ?」


「燃料が切れました……時々ザインとこうしないと……生きていけません」


「生きていけないとまで言うか……困ったな……」


 レオナは可愛い。それは分かっている。しかし恋愛とは遠い存在であり、娘や妹のイメージとなって固まってしまった。


 そもそも俺自体が恋愛事態に精通していないし、心に熱が灯ったかといわれれば嘘になる。


「ゆっくりでいいから……治していこうな……それまでも、それからも……俺が側に居るから」


「……はい」


 消え入りそうな返事と共に胸元へと顔を埋められ、俺は静かに抱き締める。心に負った傷ならば、きっといつか治る筈だ。それまでは、こういう関係を続けていけばいい。

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