彼の居ない世界で 其の一
──【神の家】最上階。
広い空間に鎮座する石造りの玉座。そこに腰掛けるは端正な顔立ちをした魔族の少年だった。男性にしては長めの銀髪。魔族の象徴たる黒角はやや小ぶりで、彼の年齢が外見相応である事を示す。
そんな若き王である彼の目の前には瓦礫の山が置かれていた。乱雑に積まれたそれに向けて、彼はゆっくりと手をかざす。
その次の刹那。ただの瓦礫だったものが、あっという間に家具へと変化した。それも元の材質とは全く異なる木製のテーブルセットだ。
「うーん、もう限界か……この調子じゃ世界の
淡々と吐露しながら、少年は拳を閉じたり開いたりを繰り返す。不完全な転生を遂げた彼は思うように力を発揮できないのだ。
「申し訳ございません、ジオルド様。私が不甲斐ないばかりに……」
その様子を眺めていたアストラフェが深々と頭を下げた。
「気にするな、アストラフェ。別に君を責めてるわけじゃない。ただの現状確認ってやつさ」
「ですが……」
「くどいなぁ。さっき許すって言ったろ? それに成果もあった。素直に喜びなよ?」
「……はい」
ジオルドに諭されたアストラフェは少し間を開けてから小さく頷いた。
「それよりも今後の話をしようか。もう取り掛かってるんでしょ?」
「えぇ……事前に世界各国の主要都市で下準備をしてありますわ。二週間もあれば主要国全てに【神の家】を創造できるかと」
「……へぇ、驚いたな。この世界には君のスキル条件を満たす建造物がそんなに存在するんだ?」
「初めて見た時は、私も驚きました。この世界に住む
彼女の持つナンバーズスキル
「ふぅん……なら一度この世界を観光してみようかな」
「はぁ……観光……ですか?」
主の思いがけない発言に、アストラフェは困惑した表情を見せた。予想通りの反応にジオルドはくくくと堪えるように笑った。
「……もしかして私の事をからかってます?」
「くくく、そうじゃないよ。や、ほんの少しはあるかもしれないけど、それよりも──」
若き王である彼は、少しだけその瞳を獰猛さを宿らせて吐露する。
「これから無くなる世界なんだから、少しくらいは記憶に刻んでやろうかと思ってね」
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