生きたくないから、消えたいから、そんなことを考えてしまう自分が許せないから。

私は自らの手首に刃物を突きつける。


臆病な私はカッターを持つ勇気がない。

死ぬことを渇望しているにも関わらず、自分をほんの少し傷つけることすらできない。


だから私は、代わりにはさみを押し付ける。血が止まるほど、強く。

手首に残るはさみの跡を見ると、少しだけ、救われた気がするのだ。


私は今日も残された傷跡に縋り付く。でもそれは所詮偽りの傷跡。

息を何度か吸って吐いたら、もうそれは消えてなくなっている。


まるで、お前の辛さは嘘だとでもいうように。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る