第13話

       君のいた季節


「昔のことをよく思い出す」

蝉の声が聞こえた。蝉の鳴き声は次第にビッグ

バンのように広がって行き、やがて止んだ。

三田村和夫は公園で木製のベンチに座りながら

隣にいる金田アユカに静かに話しかけ

「十年前、僕には婚約者がいた」

三田村は壊れた記憶の箱📦のように封印

しておきたかった思い出が溢れ出すのをか

どうしても止めることができなかった。

「僕は婚約者に毎夜、暴力をふるっていた

らしい」

「らしいっていうのは?」

アユカが聞いた。

「記憶がないんだ」

三田村が頭を抱えた。

「五年前、🚗🚘交通事故にあった」

頭を上げた三田村は縋るような目でアユカ

を見た。


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