第691話 出発とその一方で……
宰相ハウレット=フィルグレイとの打ち合わせを終えたミナトは宰相の先導で王城内を移動する。王城から移動する予定の王族達はほぼ準備が完了しているとのことで彼等が待機している広間へと案内されているところだ。ちなみにちらりと視線を上げると天井や壁に極小かつ極薄、そして透明になったピエールの分裂体がいたるところにくっついて目を光らせている姿を確認できることは秘密である。
ティジェス侯爵家による新型ゴーレム披露の場には王家からは国王マティアス=レメディオス=フォン=ルガリア、王妃アネット=セレスティーヌ=フォン=ルガリア、そして第一王女であるマリアンヌ=ヴィルジニー=フォン=ルガリア、さらにマリアンヌの婚約者であるジョーナス=イグリシアス=ミュロンドが出席する。
さらに国賓という扱いでこれに星
「うむ。マスターよ!久しいな!」
「ん。元気にしてた?」
広間に到着した瞬間、騎士服を纏った美女と綺麗なドレスを纏った美少女が寄ってくる。デボラとミオである。
真紅のロングヘアーに切れ長の目、きりっとした表情が魅力的なデボラには青を基調にした麗水騎士団の騎士服がとてもよく似合っている。
ミオはウッドヴィル公爵家に所縁の者であるという印象を与えるためか、こちらも麗水騎士団に由来する青を基調にした明るいトーンの可愛らしいドレスがよく似合っていた。
「デボラの騎士姿……、とても似合っているよ。ミオのドレスも完璧だね」
「うむ。これはなかなかに動きやすいのだ!」
「ん。用意してもらった!」
笑顔で胸を張るデボラとピースサインをするミオ。この広間には国王も王妃も第一王女もその婚約者もこの国の宰相もいるのだがそんなことを気に留めてもいない行動だが、それを咎める者はこの場には一人もいない。
王家のメンバーは当然のごとくミナトたちの存在についてよく理解している。背後に控えるカーラ=ベオーザ以下、彼女が率いる騎士達も神聖帝国ミュロンドに同行したメンバーで構成されているのでミナトたちを不敬に問うものなど皆無であった。
『それで、デボラ、どんな感じかな?』
『うむ。騎士達だが……』
『そうか……、だとするとやっぱり……』
『うむ。カーラ殿はマスターの考えを支持するということだ』
『じゃあ、あとはミオにお願いかな?』
『ん。そのあたりはボクがみんなの近くにいるからだいじょうぶ!』
王家の面々を無視した他愛もない会話を重ねる裏で、念話で護衛における確認を済ませるミナト。とりあえずはミオに任せておくことが可能ということで安心する。
「後はマリアベルかしら?」
シャーロットが言う。儀式の一つを行っているというマリアベルが合流するには今少しの時が必要なようだ。
「カーラさん?宰相様と依頼内容は確認してきたけど王城からの道中、おれ達は騎士の皆さんの外側に配置されるということで問題ないですか?」
ミナトの問いに、
「そうですね。王城からの道中は皆さま全員が乗ることのできる大型の馬車を使用します。我ら騎士がその周囲を固め、馬車の中にはミオ殿が同行する予定となっています」
そう答えるカーラ=ベオーザ。馬車にミオ、周囲の騎士はカーラ=ベオーザが率いるウッドヴィル公爵家の精鋭である麗水騎士団とデボラ、その周囲にミナト、シャーロット、ナタリア、オリヴィアという布陣。さらに道中の街中にもピエールの分裂体が配置されている。遠距離攻撃だろうが近距離攻撃だろうがこの布陣を突破するなど不可能な話だ。
『やっぱり会場についてからが本番かな?東方魔聖教会連合のゴーレムが本当にいるのかどうか……、王都の郊外はどうなっているのか……』
ミナトがそんなことを考えていると、
「マリアベル様がおいでになりました」
そんな声がドアの外から聞こえてきた。
「さて……、行くとしますか……」
ミナトの呟きにシャーロット、デボラ、ミオ、ナタリア、オリヴィアが好戦的な笑みで頷き、水色スライムオードのピエールがミナトの肩の上で揺れる。
一方そのころ……、
「ふむ……。マスターの話では王都に侵攻するためこの森の中にゴーレムが配備されている可能性が高いということであったが……」
「王都にはピエール殿の分裂体と部下たちがおりますからな。我らはあのくだらない連中とゴーレムの探索とその殲滅に注力しようではないですか?」
「今回はわもお手伝いさへで頂きあんすね」
とても王都郊外の森を散策するような格好には見えない黒いワンピースにブーツをはいた黒髪細身の美女と薔薇をあしらった鎧を纏う金髪色白の女性騎士、そして腰に双剣を携えたオーバーオール姿のイケオジの三人が……、ゴーレムを相手にするには完全に過剰戦力である三人が王都の南に広がる森の中を探索中であった。
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