第692話 探索対象発見
ここは王都から南へ延びる街道沿いに広がる森の中。王都の東に広がる大森林のように強大な魔物が跋扈するようなことはないが、弱い魔物からある程度の強さの魔物までバランスよく出現するため普段であれば初級から中級の冒険者が魔物の素材を求めて出入りするような森である。王都の住民が森に入ることはないが冒険者にとってはよい狩場という印象の森だ。
そんな南の森では本日、冒険者ギルドから秘密裏に立ち入り禁止の指示が回っているのだが、森の中には三つの人影を確認することができる。
森を散策するような格好には見えない黒いワンピースにブーツをはいた黒髪細身の美女、薔薇をあしらった鎧を纏う金髪色白の女性騎士、そして腰に双剣を携えたオーバーオール姿のイケオジの三人……、ロビン、フィン、ファーマーさんである。
三人はミナトの指示で南の森の探索へと赴いていた。正確にはロビンとフィンがミナトの指示を受けたのだが、ファーマーさんも、
「今回はわもお手伝いさへで頂きあんすね」
の言葉と共にロビンとフィンの探索に加わったのだった。
すでに南の森を含めて王都全域を簡単に更地にできる戦力のはずなのだがそれだけには留まらない。
「おお!ピエール殿!分裂体を派遣して頂けたか!」
「ふふ……、お気遣いかたじけなく……」
「ピエールさんありがどがす。まさに
どこから現れたのか三人の肩の上に水色のスライムが出現しふよふよと揺れている。
ピエールは人の姿では幼女であるが、F級冒険者パーティ『竜を饗する者』の中ではミナトの二番目の愛人というポジションである。彼女たちは本質的には魔物なので力関係には敏感だ。友人であるファーマーさんは別だが、三番目の愛人であるロビンと四人目の愛人であるフィンからすると格上の存在ということになっていた。そのためロビンとフィンはピエールに敬意をもって接しているのである。
そんなピエールの分裂体を加えよりヤバくなった三人と一体(分裂体は三体)は南の森の探索を継続する。しばらくして……、
「うーん……、我らはマスターやシャーロット様ほどの索敵能力は……」
そう呟くのはロビン。
彼女は二千年前に魔王軍の大幹部として人族や亜人の側から恐れられた存在であった。シャーロットの魔法である
つまりミナトやシャーロットと比べると索敵の範囲は狭いが、決して狭いわけではないということだ。
改めて周囲の気配を確認するロビン、するとロビン、フィン、ファーマーさんの三人が顔を上げる。森の一画に魔力の反応を感知したのである。
「これは風の魔力……、間違いなかろう!マスターの仰っていたゴーレムの反応と見た!」
「ええ、場所を特定しました。どうやらすでに動き出している様子。参りましょう!」
「
同時に三人が走り出す。三人が浮かべるその好戦的な笑みは向けられる相手に確実な破滅が迫っていることをはっきりと示していた。
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