第687話 殲滅開始
残っている襲撃者は十一名と一人。ほぼ全員がどこぞの傭兵か冒険者崩れといった様子を感じさせるが、オリヴィアとナタリアは違和感を覚えた一人を鋭く見据えている。
「あなた達が何者かは存じ上げませんが私達の邪魔をこれ以上するというのであれば死んで頂くことになりますよ?」
そう無謀というか、あまり意味があるとは言えない台詞をオリヴィアとナタリアに投げかける男。すると男の全身が輝き、その装いが黒に金をあしらった司祭服のようなものへと変化した。
「その姿……、やはり東方魔聖教会連合の残党か……」
オリヴィアがそう呟く隣で、
「あらあら〜?」
そう言いつつ巨大すぎる鉄塊……、もとい巨大な大剣を軽々と肩に担ぐナタリアが首を傾げる。
「ナタリア様?」
「どうやらピエールちゃんが侯爵家で見た者とは別人のようですね〜。あの連中の〜、末端の小物といったところでしょうか〜?
かつてロビンと出会ったダンジョンでナタリアはミナトたちと共に東方魔聖教会連合の片割れである東方魔導連の幹部が纏う真っ赤なローブの男と戦っている。
ダンジョン内で禁忌の魔導生物とされるアニムス・ギアガを大量に揃え王都に侵攻しようとしていたその男はナタリアのことを『鉄塊の女王』と呼んで畏怖していた。
これは連中が保管していた二千年前の記録に鉄塊のような大剣を振り回し同志を惨殺しまくる女性の記載があったからなのだが、目の前で威勢を張る男はそのことを知らないらしい。ただし、一見すると利用価値はなさそうに見えるのだが……。
その辺りのことを念話でオリヴィアへと伝えるナタリア。オリヴィア小さく頷くと、
「私としては投降を勧める。お前の知る全てを話せば死罪は免れるかもしれんぞ?」
どうせ大して重要な情報は持っていない。だがこの男はおそらく組織の末端。連中は契約魔法や隷属魔法で情報を統制する。組織の中心人物であればあるほどその縛りは強い。だが末端の者であればこそ契約魔法をすり抜ける情報を持っている可能性があることにナタリアは期待した。
ナタリアやオリヴィア含めミナトたちは基本的にどんな存在を相手にしてもなんとかなる。だがこの王国はそうではない。未だ全貌が掴めない連中の情報は多いに越したことはないという判断だった。
「この私に降伏しろとは面白いことを仰るものだ」
その言葉と同時にいつのまにか右手に握られていた杖から白い光が溢れ残っていた十一人の襲撃者を照らす。
「「「あがががががが……」」」
するとナタリアとオリヴィアに三十人以上を瞬殺されたことで青ざめ震えていた襲撃者達が呻き声どない奇声を上げて全身を痙攣させのたうち回る。
その様子を怪訝な表情で見守るオリヴィアとナタリア。
そして光が収まると襲撃者達が立ち上がり虚な瞳で無言で武器を構えた。
「どうですか?これこそ我々が二千年の歳月をかけ作り上げた魔王様に捧げる改良型
得意げに語る黒に金をあしらった司祭服の男を前にオリヴィアとナタリアはため息をつく。
『愚かな……、神聖帝国ミュロンドでマスターたちが見たという生きた人族を利用したという人形もこの魔法が使われていたのかもしれません……』
『持続的に
『御意……』
普段は冷静で温厚であるはずの二人の瞳が怒りの色を帯びるのだった。
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