第682話 いつものごとく冒険者ギルドにて
時刻はそろそろ夕刻といったところ。夏祭りの関係で治安維持に関係する依頼が多くなっているというが昼間の依頼を精算するためかギルドには大勢の冒険者の姿がある。
そんな冒険者ギルドの二階にある個別案件の打ち合わせに使用される個室が並ぶスペースの一室で、
「ティジェス侯爵家によるゴーレムのお披露目……、ですか?」
「はい。明後日に行われるということです」
ミナトの言葉をカレンさんが肯定する。
冒険者ギルドの使いから『冒険者ギルドへ来てほしい』というカレンさんのメッセージを受け取ったミナトはシャーロットと青色スライムモードになってもらったピエールを伴い冒険者ギルドへと赴いた。冒険者ギルドのロビーにロビンとフィンがいたので共に話を聞くことにしたミナト。
そういうわけで個室に据えられたソファに腰掛けるカレンさんに相対する形で、テーブルを挟んでソファにミナト、その隣にシャーロットが腰掛けている。そしてミナトの肩の上にピエール、ソファの背後にロビンとフィンが護衛のように立っていた。
到着してすぐに聞かされたのがティジェス侯爵家が王家に自家のゴーレムのお披露目を嘆願したという話である。
「ゴーレムのお披露目って……、実際にそんなことできるんですか?さすがに王城ではできないですよね?」
この打ち合わせが何ための打ち合わせで、いったいどんなことに繋がるのか……、カレンさんはまだその辺りことを話してくれないが、とりあえず気になったことを聞いてみるミナト。
「ミナトさんは夏祭りの後半に城壁外に設けられた騎士様の訓練施設で様々な催しが開かれるのをご存知ですか?」
カレンさんも核心はぼかしたままミナトの質問に答えるようだ。シャーロットは何も言わずに成り行きを見守っている。ピエールはふよふよと揺れている。ロビンとフィンは寡黙に佇んだままだ。
カレンさんの言葉に首を傾げるミナト。大陸でもそれと知られた街の一つである王都は非常に広い。ミナトも全てを把握しているわけではない。
そんなミナトにカレンさんが地図を広げる。王都に地図だ。戦いのあるこの世界において地図は簡易なものならいざ知らず詳細なものは入手が困難である。カレンさんが広げたのはかなり詳細な王都の地図であった。
「こちらをご覧ください」
そう言ってカレンさんが指し示すのは王都の南西。城壁の外側に隣接するように何かの施設が描かれている。
「かつて……、といっても数百年前のことですが奴隷や剣闘士といった方達を闘わせていた闘技場がここにあります。現在は改修され騎士団の訓練や王都内ではできない危険を伴う実験、魔法の披露などが行われる施設になっています。使用権は広く与えられていて時間と予算が許せば基本的に誰でも使用可能です。いちおう王城での審査はありますが……」
カレンさんの説明によると民間の利用としては大規模な市場や、貴重な魔獣の取り引き会場、劇場としてなどその用途は多岐にわたっているらしい。
「夏祭りでは王城や貴族などが主催して、魔法研究の発表や、お抱えの騎士、冒険者、魔導師を競わせる模擬戦などが行われます。一般の住民も見ることができるものがほとんどですが、貴族の暗闘の場という側面もありますね」
なるほどとミナトは納得する。ルガリア王国は安定した大国だが貴族の暗闘は普通に存在することはミナトも聞いている。ここで行われる王城や貴族主催する催しは自家の優位性を他家に知らしめる場として利用されているようだ。住民の娯楽の側面もありそうだが……。
ティジェス侯爵家は埋まっているスケジュールに強引にゴーレムのお披露目を捩じ込んできたらしい。
「王城は国立の魔法研究機関による報告を始めいくつかの催しを中止し、ティジェス侯爵家によるゴーレムの披露実施をお認めになりました」
そこでカレンさんが立ち上がる。
「王家と二大公爵家の名前でミナト様率いるF級冒険者パーティ『竜を饗する者』に追加の指名依頼がございます」
そう言って頭を下げるカレンさん。現在、王家と二大公爵家から星
「とりあえず依頼内容を教えて下さい」
今回はかなりの確率で無理な依頼でも受ける気になっているミナトだがいちおうそう答えて様子を見るのであった。
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