第681話 祭りの喧騒の中で
多くの人々が祭りを楽しむために王都を訪れ、また王都の住民も街へと繰り出し祭りを楽しむ。
通りには様々な出店が並び、ここぞとばかりに仕入れられた各地の品々……、肉、魚介、野菜、果物、香辛料、お酒、料理、工芸品にちょっと怪しげな雑貨などまでが売られている。料理を扱う出店では食事ができるスペースが設けられ様々な味を楽しめた。
銃剣の二刀流が似合いそうなダンディなおじさまが販売する野菜の屋台や赤い民族衣装を思わせる衣服を纏った長身の美女達が販売する果物、青い民族衣装を思わせる衣服を纏った少女達とエプロンドレスを纏った長身の美女達が共同で販売するワインや燻り酒などはとても好評だったらしい。
さらに各
さらに建築家であるグラン親方も模型の品評会に工房で参加したとミナトは聞いている。なんでも漆黒の城を報酬としてもらった本物の素材で再現しようとして弟子に『理解してもらえませんから!』と止められたとか……。
普段から昼夜を問わず活気に溢れる夏の王都だが間違いなくそれ以上の喧騒に包まれていた。
「……平和だ」
そう呟くのはミナト。祭りの喧騒もここまでは聞こえてこない午後の優雅な昼下がり、ここは小規模だが王都でもそれと知られた高級宿である『星降る満月の湖畔亭』。ミナト達の護衛対象であるマリアベル率いる星
護衛のために充てがわれた大きな一室。その大きなソファに寝転んでリラックス状態のミナトである。
ふよふよ……。
胸の上では本来の虹色スライムモードなピエールが揺れている。無地の黒い半袖シャツとジーンズによく似た綿製のパンツスタイルなミナトが撫でるとつるっとしてひんやりするのが心地よい。
さすが高級宿といったところか魔道具による冷暖房は完備されているらしく真夏であるにも関わらず室内は快適そのものだ。
夏祭りも今日から後半に差し掛かる。連日、護衛として誰かを宿に残しつつ、シャーロット、ナタリア、ピエール、オリヴィアと交代で夏祭りを楽しんできたミナトだが、本日は休息ということです宿でのんびりしているミナトであった。
「平和なのはよいことだと思うわよ?」
テーブルを挟んで反対側にある同じく大きなソファに腰掛けている美人のエルフ……、シャーロットがそう言ってくる。白いショートパンツに白シャツのみというのが目の毒である。
「そうですね〜。相手側の出方を待っている状態ですが〜、何もないならその方がいいですね〜」
その隣に腰掛けているのは圧倒的な肉感あふれる妖艶なスタイルをエプロンドレスに内包している美女……、ナタリアもそう言ってきた。
ちなみに二人の背後には執事服を纏ったオリヴィアが静かに佇んでいる。中性的な魅力を湛えるオリヴィアにはキリッとしたこの服装がよく似合った。ソファは大きいので全員がものすごく余裕を持って座れるサイズなのだがオリヴィアはこちらがよいらしい。
「動かないかな?」
「何かあるとしたらそろそろだと思うわよ?」
ミナトの問いにそう答えるシャーロット。
あと数日で星
今回は王都までの道中での襲撃のこともあり星
カレンさんからの繋ぎでは懸念されていたほど街の治安は悪くはなっていないらしい。むしろ以前の夏祭りの時に比べると格段によいのだとか。王城の騎士と冒険者が協力して治安維持にあたったことの成果ところだった。あとフィンの部下たちに絡んだ冒険者が排除されたことも大きいとカレンさんは言っていた。
「ティジェス侯爵家か東方魔聖教会連合か……、それとも侯爵家の背後にいるかもしれない黒幕か……、できることは少なくなっているはずだけど……」
ミナトがそう呟いた時、部屋の扉がノックされた。
「ミナト様、冒険者ギルドから使いの者が参っています」
宿の従業員の言葉に事態がなんらかの動きを見せたことを直感するミナトであった。
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