第674話 魔王と同じ末路を

 王都の東に広がる大森林の最奥部。そこに築かれているミナトの城。その中庭でミナトはシャーロットとファーマーさんからウインドドラゴンについて教えてもらう。


「ウインドドラゴンの特徴はなんとなく理解したよ……。それでさっきはこのゴーレムに風の妖精シルフィードの素材が組み込まれているって言っていたけど……?」


 そんなミナトの問いにはファーマーさんが頷いて、


「その通りだ。このゴーレムの回路には風の妖精シルフィードの素材使用されでらった。これによりミナト殿どシャーロット様の仰ってらった風魔法による攻撃可能にしてらったようだ。素材さ残ってら魔力がら考えでダンジョン内で息絶えだ際の素材だべ」


 そう説明してくれる。


「ダンジョンで死亡して素材……?あ、風の妖精シルフィードも魔物だから……、そういうこと?」


「そうね。ダンジョンの外で魔物が斃された場合その体の全てが残るけど、ダンジョン内で息絶えた場合は一部の素材だけが残る。世界の属性を司るドラゴンは基本的には不死だけど不死身じゃない。寿命というものはないけれど病死はあるわ。ウインドドラゴンがダンジョン内部で息絶えた場合、風の妖精シルフィードの素材が残るの」


「そして『風のダンジョン』内でウインドドラゴン息絶えだ場合、その素材は『風のダンジョン』の浅層にある風竜の墓標さ納められるど聞ぎ及んでら。このゴーレムさ使用されだ素材はその墓暴いで入手したもののようだね」


 ミナトの疑問にシャーロットとファーマーさんが答える。


「最初は捕まえた風の妖精シルフィードの素材を使っているって思ったから……」


「なるほど、それで……」


 シャーロットが怒っていた訳を理解するミナト。少し赤くなっている美人のエルフが頷いて肯定する。


「でも風竜の墓標を暴いて風の妖精シルフィード素材を得るって行為だってとても許されたものじゃないわ」


 そう言って怒りを露わにするシャーロット。隣でファーマーさんも頷いている。


風の妖精シルフィードの翼は死してなお世界に風を届ける役目を担う。風竜の墳墓はそのことわりに則った風習であり掟のようなものなの。墳墓を穢す行為はこの世界を司る属性への明確な破壊行為と看做される……」


 非常に好戦的な笑みを浮かべるシャーロット。


『えっと……、たしか全ての魔物を意のままに操ることができた二千年前の魔王は世界の属性を司るドラゴンさえも操れて……。シャーロットは世界の属性を守るために魔王を滅ぼしたんじゃなかったっけ……?』


 そんなことを心の中で呟くミナト。どうやらこの世界を司る属性に何か干渉しようとするとシャーロットが現れるらしい。破滅を届けに……。


「ええ……、そうね……。こんな愚かなことをするのはあの魔王以来かもしれない……。私も舐められたものね。ピエールちゃんからの報告次第だけど、この落とし前はきっちりとつけさせてもらうわ!」


 ミナトの心の呟きは念話なっていないと信じるが、シャーロットの中で今回の首謀者への判決は既に決まっているようだ。


『魔王と同じ末路かな……』


 首謀者の自業自得とはいえその行為は余りにも愚かなもので同情できる余地はない……、だがそれでも首謀者たちの末路を思い心の中で手を合わせるミナトであった。

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