第672話 シャーロットに説明をお願いする

 ファーマーさんの解析によるとミナトたちを襲撃したゴーレムや王都南の街道沿いにある森の中に配備されていたゴーレムには息絶えた風の妖精シルフィードの素材が使用されているという。


 ミナトが思う風の妖精シルフィードという存在は有名なバレエの演目かファンタジー作品に登場する妖精のことだ。だからシャーロットからは、


風の妖精シルフィードはウインドドラゴンの仮の姿、真の姿はデボラ、ミオ、ナタリアと同じ世界の属性を司るドラゴンなのよ」


 と言われ驚いた。


 とりあえずウインドドラゴンについて説明をお願いするミナトである。


「そうね……、ウインドドラゴンは『風のダンジョン』の最深部で暮らしている世界の属性を司るドラゴンよ。『風のダンジョン』は王都からだと南に行くことになるかしら?」


「やっぱり世界最難関ダンジョンなのかな?」


「それはもちろんよ。最初の何層かは洞窟が続くのだけど……、ふふ……、そこから先はお楽しみね……」


「そうなのね……」


 様々な思い出が蘇る。『火のダンジョン』はサラマンダーという炎を吐くサンショウウオ魔物に囲まれたがそこまで苦労はしなかった。捕獲したレッドドラゴン……、後のデボラの背に乗ってショートカットできたのが印象的であった。『水のダンジョン』で大量の魔物を駆逐した先にあったのは巨大な地底湖。その地底湖のど真ん中に穿たれた大量の水が流れ落ちる大穴を土製の船で垂直落下……。『地のダンジョン』ではピエールが最深部に居座ったことで異常発生したゴーレムを駆逐し、壁の向こうにあったトロッコで絶叫マシンの数十倍の恐怖と共に最深部まで一息に移動。


『どのダンジョンも基本的にショートカットが必要なんだよね。竜の背、小舟で垂直落下、トロッコが激走……、今度はなんだろうか……』


 そんなことを考えていると、


「ウインドドラゴンには一つの特徴があるの。本当は秘密にしておきたかったけど戦闘には関係ないし今回のゴーレムの話にも繋がってくるから説明するわね」


『……やっぱり戦闘はあるのね……』


 シャーロットの話を聞きつつもそんなことを思ってしまうミナト。できれば戦闘は避けたいのだがシャーロットによると世界の属性を司るドラゴンもまた魔物であり魔物は本能的に力の強い存在に従うらしい。最初に力を示すことが後の対話に有効とのことなのだ。魔王と呼ばれたくないミナトにとってはちょっと微妙な対応である。


「その特徴というのはね……」


 そんなミナトの心の呟きに気付いているのかいないのか美人のエルフは話を続けるのだった。

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