第668話 宿に到着
「お帰りなさいませマスター、シャーロット様、ピエールも元気なようで何よりです!」
冒険者ギルドを後にして今日から滞在する宿へと移動したミナト、シャーロット、そして
案内された一室のドアを開けると執事風の装いを纏った銀髪で中性的な顔立ちの美人がそう言って迎えてくれた。オリヴィアである。
「オリヴィア。護衛依頼を全て押し付けてしまい申し訳なかったね」
「とんでもございません。私はマスターの忠実な僕です。いつでもどんなご命令にも従いますので……」
そう答えて一礼する所作はデキる執事を思わせる見事なものだ。
「ナタリアは……?」
「宿の周囲を警戒されています。もうすぐ戻られるかと」
どうやらナタリアは宿の外で警戒してくれているようだ。
「オリヴィアもお疲れ様!何も問題は起きなかったかしら?」
「はい。冒険者ギルドからの移動時に問題はなく、宿にはピエールから預かったかなりの分裂体を配置しました。この宿の中にいる限り彼等に危険が及ぶことはないでしょう」
シャーロットに問いかけにそう返すオリヴィア。
ここは小規模だが王都でもそれと知られた高級宿である『星降る満月の湖畔亭』。ミナト達の護衛対象であるマリアベル率いる星
「とりあえず依頼の序盤……、王都までの護衛は達成といったところかしら?」
「そんなところかな?」
シャーロットの言葉にそう相槌を打つミナト。
星
このタイミングで第一王女であるマリアンヌは王位継承権を放棄し新たに公爵家を興すことになるという。そして公爵家が正式に認められた後、婚姻の儀が執り行われることになるらしい。
「宿は貸切にされているし、王家からの指示で星
そう言いながらミナトは部屋に用意されているワイングラスを四つテーブルに並べる。すでにピエールは
そして【収納魔法】である
「ふふ……、いいんじゃない?」
「お供します」
シャーロットとオリヴィアは乗り気である。
『美味しソウデス〜』
そんな念話と共にピエールが幼児モードへと姿を変える。そのタイミングで、
「戻りました〜。周囲に異常はないようです〜。あらあら〜?どうやらよいタイミングだったみたいですね〜」
絶妙なタイミングでナタリアが帰還する。
この世界のワインは樽で保管され、ボトルに移す際は魔力によって開閉する栓が用いられている。この世界でも様々な栓にコルクが使われていることを知ったミナトはブルードラゴン達にお願いしてコルク栓によるボトルでの保管にも挑戦してもらっているところだ。
そういった経緯から残念ながら元の世界でソムリエが使うようなソムリエナイフはこの世界には存在していない。ミナトは金属加工職人のドワーフであるバルカンにお願いして詳細を詰めているところだがコルク栓のワインと同様にこちらももう少し時間が掛かりそうである。
一杯目は白ワイン。やや緑色がかかった明るい黄金色の液体が四つのグラスを満たす。全員がグラスを手にする。
「深夜になってしまったけど乾杯しよう。王都までの護衛の成功に!みんなお疲れ様でした!」
「「「「「乾杯!」」」」」
目線の高さにグラスを掲げる一堂の声が重なる。
「さてと、ワインを楽しみつつ、現状と明日の予定を確認しようか?」
ミナトの言葉に全員が頷いて、深夜のちょっとした宴が開催されるのであった。
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