第665話 探索範囲の拡大は……
「依頼内容に従いこの地図に記されている全ての場所を探索したがゴーレムの姿は確認できなかった。そちらの見解と相違はないだろうか?」
そう確認するのはB級冒険者パーティ『
「そんなバカな……、私は……、私は確かに巨大なゴーレムを見たのだ!おそらくゴーレムが移動しているのだ!そうに違いない!これより探索の範囲を広げ……」
そう主張するグンナル=バリエンダールの言葉を、
「おっと、悪いがそれはできない相談だ」
ウィルがグンナルの言葉を遮るようにそう返す。
「なんだと!?きさま……、何様のつもりで……」
「依頼を受託した時に確認したはずだ。当初、俺達は最初の依頼にあった探索経路を再探索することを提案した。しかしお前さん達はこの地図に描かれた印に沿っての探索という依頼を出したじゃないか?探索範囲の拡大は今回の依頼内容には入っていない」
「ふ、ふざけるな!ならば今ここで依頼を出す!探索範囲を拡大だ!」
声を荒げるグンナルだがウィルが冷静だ。
「そういった現場での突発的な依頼を受ける冒険者もいるようだが俺達はギルドを通さない依頼は受けない。トラブルの元なんでね……」
肩をすくめつつそう言い放ったウィルがメンバーに王都への帰還を促そうとすると、
「依頼……、じゃないんですよね」
その言葉と同時にグンナルの護衛とティジェス侯爵家の家来が従えていた護衛が『
「何のつもりだ!?」
腰の長剣に手をかけつつそう言い放つウィル。メンバーであるケルノスはメイス、ブラックは大剣、アルバンはナイフに手をかけている。
『あれ……?最初に会った時は全員が長剣じゃなかったっけ?』
『ロビン、フィン、ファーマーに指導されて変えたのかもしれないわね』
そんな念話を交わすミナトとシャーロット。ミナト、シャーロット、ピエールは再び発動した
『危なそうなら助けに入るけど……』
『きっと大丈夫。人族にしてはなかなかの魔力を感じるわ。随分と訓練を重ねているようね』
『何かあったらピエール、お願いね』
『オマカセクダサイ〜』
取り敢えず静観することを決定する三人。
「あなた方にはゴーレムの目撃者になって頂く必要があるのですよ。そしてゴーレムによって半死半生の憂き目に遭う。さらに多数のゴーレムが王都へ迫る。そこを我ら主人の私兵がゴーレムを殲滅する。そして主人は国王陛下に陳情をするのです。『王都とその周辺の治安について冒険者に頼るのは危険である。我ら貴族の兵が相応しい』とね?」
得意げにそう語る侯爵家の家来。
『そうして王家の権威を落とすってこと?』
多少は話が見えてきたと思うミナトだが、
『たしかにそうかもしれないけど……』
シャーロットは煮え切らない様子である。
そんな状況で、
「なるほど……、あのゴーレムはお前さん達が……、なるほど……、そういうことか……」
口の中でそう呟き、訳知り顔で頷きつつ笑って見せるウィル。
「何を笑っている?」
「この手勢を前に観念しましたか?」
グンナルと侯爵家の家来がそう言うが、ウィルは首を振って、
「いや……、俺達の……、いやお前達が置かれている状況ってのが分かったものでな……」
そう答えてニヤリと笑う。ウィルと同様に状況を理解したらしい背後のメンバー三人も黒い笑顔を浮かべている。
「ゴーレムを用意し国王様を相手にした大層な筋書きを用意して俺達に指名依頼を出したところまでは順調だったんだな?」
相手を挑発するかのように話すウィル。
「だが問題が起こった。肝心のゴーレムが見つからない。ギルドでゴネても埒が開かなかったお前さん達は再調査の依頼を出し俺達を釣った気でいたんだろう?そこまでは上手くいった。だけどまたトラブルだ。王都へ侵攻させるために配備したゴーレムがどこいもいない。余裕を見せつけて俺達を取り囲んじゃいるが内心は大混乱ってところだろう?」
ウィルの言葉にグンナル露骨に顔を顰めるが、侯爵家の家来は表情を崩さない。
そんな二人と取り囲む護衛達に視線を送りつつウィルはゆっくりと長剣を引き抜く。他のメンバーも武器を構えた。
護衛達も同様に武器を構える。
「一つ言っておく。お前達の企みは絶対に成功しない。この再調査でゴーレムが見つからない……、つまり……」
「もうお前達は終わりってことだ」
「既にお前達の首は断頭台の上にあるぜ?俺だったら全力で逃げるかな?」
「哀れな連中だ……」
『
「……ということで俺達のやるべきことは生きてギルドに帰って『ゴーレムいなかった』という報告だ!行くぞ!戦闘開始!」
「
「
「
『
『何そのヤバい攻撃!?』
『やるじゃない!』
ミナトとシャーロットによる驚きと感心の言葉が聞こえた気がするウィルであった。
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