第655話 そんな魔法もあった
眼前のゴーレムはどう考えても素早く動けるとは思えない外見をしていた。そんなゴーレムの内部から巨大な魔力が湧き上がる。
「はい?」
ミナトからそんな言葉が漏れる。ゴーレムが想像以上にスムーズな動きでお世辞にも長くない不恰好な両腕をこちらへと突き出したのだ。
「みんな警戒!マリアベル!私の後ろに!」
シャーロットの言葉が響く。それと同時にミナトの足元から夥しい数で漆黒の鎖が顕現した。
シャーロットの結界とミナトの【闇魔法】である
【闇魔法】
ありとあらゆるものが拘束可能である漆黒の鎖を呼び出します。拘束時の追加効果として【スキル無効】【魔法行使不可】付き。飲んで暴れる高位冒険者もこれがあれば一発確保!
「シャーロット?」
衝撃によって舞い上がった土煙を有機的に蠢く漆黒の鎖で撃ち払いつつミナトが声を上げる。
「大丈夫、みんな無事よ」
「問題ありません〜」
「明らかな敵対的行動です。我々全員を狙っていましたね」
シャーロット、ナタリア、オリヴィアが答える。結界によって守られた護衛対象であるマリアベルと星
「今の攻撃って……」
ゴーレムを見据えつつちらりとシャーロットに視線を向けるミナト。この攻撃には心当たりがあった。
「ええ、複数の
「普通の人族や亜人にその域の魔法は難しいって言ってなかったけ?」
「ティーニュが近づいているってファーマーから聞いたけどまだ無理といったとことかしら……。見たことがないゴーレムだし……、どうやら人族や亜人を超えた領域の魔法を発動できるゴーレムを造った者がいるみたいね。ちょっと驚いたわ」
素直に驚いたことを告げるシャーロット。この世界では魔法は貴重な才能とされている。人族や亜人は優秀な者でも一か二。三あれば天才と評される。レベル四相当の威力は人族や亜人の基準では極めて高いといえた。
「直接攻撃するのはヤバそうだけど、放っておくと魔法で攻撃してくる……、どうしようか?」
漆黒の鎖を周囲に展開しつつミナトは対処法を考える。シャーロットの結界は極めて強固だ。例えゴーレムに何らかの自爆機能があっても、護衛対象である星
それだけの力がミナト、シャーロット、ナタリア、オリヴィア、ピエールにはある。
「だけど……」
そう呟いてミナトは思考を巡らせる。
再びゴーレムが
そうしてミナトは考える。このゴーレムはミナト達に色々とちょっかいを出してくる今回の敵にとってどのような意味を持つのか……。
「おれ達への妨害……、星
ぶつぶつと呟いてふと考える。
『このゴーレムがものすごい高価なゴーレムだとしたら……?』
そこまで考えたとき、
「ミナト、あいつ爆発する気みたいよ!」
シャーロッ言葉に顔を上げると、ゴーレムが明るい緑色に輝き始めた。そしてその光は徐々に強くなる。
「風の魔力ね。でもどうやってあんな魔力を……?」
シャーロットが首を傾げている両サイドでナタリアとオリヴィアが衝撃に備える。
「ダメだ!」
そう声を上げるミナト。これまでの刺客への対応とその理由に思いが至った。同じ対応が必要なのだと確信する。
ここまでの道中、トラブルなどは微塵もなかったのだ……、そういうことになっているのだ。そしてこの場合もそれは同じ、この場にゴーレムなどいなかったことにしなければならないのだ。
「ミナト?」
「マスター?」
「どうされました?」
そう言ってくるシャーロット、ナタリア、オリヴィアに、
「シャーロット!対象を地中深くに沈める魔法があったよね?それであのゴーレムを沈めて爆発させて最初からいなかったことにできない?」
「できるけど……?そうね、あの刺客どもと同じ対応をするってことね!」
「なるほど〜、さすがマスターです〜」
「マスターの御心のままに!」
まさに以心伝心、全員がミナトの意思を汲み取ったと同時にシャーロットが、
「
そう唱えると魔力に光り輝くゴーレムの巨体がさらに大きな魔法陣に包み込まれる。そして……、
とぷん……。
そんな書き文字を残して地面へと消えた。しばらくして、
ズズン……。
地下深くからそんな振動音が聞こえたような気がするミナト。星
『ゴーレムを破壊されればおとなしい貴重なゴーレムを破壊したと王家や冒険者ギルドに苦言を呈する。破壊できずにおれ達が全滅すれば星
いつもより少し黒い笑みを浮かべつつ、心の中でそう呟くミナトであった。
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