第650話 そして露天風呂へ
「ミナト、フィンの部下であればどうとでも対処できるだろうけど、どうする?」
幼女モードのピエールを膝の上で抱き抱えた状態で足湯を楽しんでいるシャーロットが聞いてくる。
「フィンの部下が襲われているのにこちらが何もしないなんて……、基本ないよね。反撃はしたいけど……、とりあえずカレンさんには……」
ミナトがフィンのいる方へと視線を送る。
「……これは素晴らしい……、人の姿を取り戻し、
さらにはこのような体験をする日が来るとは……、っと、す、すでに報告済みです」
足湯とアイスのコラボレーションを恍惚の表情となって存分に満喫していたフィンが慌ててそう答える。普段の騎士団長然とした凛々しい佇まいも美しいのだが、このような女性らしい反応を見せる一面もまた魅力的であると感じるミナト。
ともかくカレンさん……、つまり冒険者ギルドもこのことは把握しているということは、
「カレンさんの方でも対策はするだろう。だけどバカじゃない貴族や他国の有力者が画策しているならそう簡単に尻尾は掴ませてくれない……」
そう呟いて俯きつつ考える。ならず者の冒険者を捕らえても首謀者まではおそらく辿れない。であれば……、
「ここは対症療法をしっかりと……、かな!」
そう言って顔を上げるミナト。
「いい案を思いついたの?」
幼女モードのピエールを膝の上で抱き抱えつつシャーロットが問いかける。
「大した案じゃないけどね……。フィン!」
シャーロットにそう返してフィンを呼ぶミナト。
「は!」
ミナトの言葉に呼応するかのように、片膝をつき
「
「全く問題ございません。存分にお使い下さい」
即答するフィン。
「カレンさんにお願いして冒険者たちには彼女たちが
「マスター、撃退法は先ほどのような方法で?」
「死ななければそれでいいんじゃない?」
「ではそれで!」
今ここに王都の女性冒険者を襲った者には首の骨を折られて瀕死か、精神を破壊されて再起不能のどちらかの結末しか残されないことが決定した。
「王都はいい街だし、冒険者ギルドにはお世話になっている。カレンさんはきっと公爵家や王家と連携するし彼等なら首謀者を見つけるはずだ。おれ達はおれ達のできることでちょこっとお手伝いしよう!」
ミナトの言葉に全員が頷く。
「それとピエール!」
「なんでショ〜?」
「ちょっと予定よりも早いけど王都に分裂体を放ってくれる?女性冒険者を襲えないと知った連中が住民に狙いを変えるかもしれないから護ってあげてほしい」
夏祭りの期間、王都の住民がならず者に襲われる可能性は限りなくゼロに近づくことが決定した。
「マカせてくだサイ〜」
そう言ったピエールの身体が輝き虹色球体モードとなってシャーロットの膝の上から飛び出す。
ふよん。
そんな擬音語と共に飛び出したピエールが勢いよくミナトの胸に飛び込んできた。
「ごふっ……」
ミナトから変な音が漏れる。
「ガンバリますネ〜」
そこにはミナトの上半身に幼女モードでぴとっとくっつくピエールの姿があった。一糸纏わぬ状態で……。
「ピエール!?」
「うふふ〜」
とても嬉しそうにしているピエールを剥がすのが忍びなくなるミナト。
「ピエールちゃん、やっぱりそれは反則だとお姉ちゃんは思うの……」
シャーロットが幼女モードのピエールに張り付かれて仰向けに倒れているミナトの傍に来てそう呟く。そして何か思いついたように笑顔になるシャーロット。
「そうよ……、ミナト!足湯に浸かって汗かいちゃったわ。あっちのお風呂で汗を流しましょう?」
露天風呂が広がっている外を指差してそう言いながら浴衣の帯を外し始める美人のエルフ。なぜかその所作が妙に艶めかしい。
「うむ。良い考えだ。我もそうさせてもらおう!」
「ん。ボクも!」
「素晴らしい提案です〜。
デボラ、ミオ、ナタリアが足湯から上がってシャーロットの動きに追随する。確かにすぐ外は広大な、それはそれは広大な露天風呂が広がる温泉郷だがここで浴衣を脱がなくても……、と思うミナトだがもう遅い。
「僭越ながら私もご一緒させて頂きます」
「足湯もよかったが肩まで浸かれる温泉は別格であるからな吾輩も……」
「では私も……」
オリヴィア、ロビン、フィンも浴衣の帯に手をかける。
フィンがそうしたからか、
「やっぱり露天風呂は外せませんー」
「夜空が見えるお風呂っていいですよね?」
「戦場では考えられないくらいの贅沢です」
「足湯と温泉……、どっちも魅力的ですぅ」
口々に言い合いながら
「ちょっと……、みんな……?」
そんな光景を前に眼球に血液が集まる気がするのは気のせいだと思いたい。
「さ、ピエールちゃんも、ミナトも、露天風呂に行くわよ?」
完璧としか表現できないような造形美を見せつけるシャーロットに促されるミナトはこれから始まる永い夜を覚悟するのであった。
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