第647話 みんな参加します
「これは出遅れてしまいましたか……」
ダンジョン化した温泉施設で夏の夜空と足湯とアイスクリームを堪能していたミナトの背後からそん声が聞こえてくる。
「足湯っていうんだ。とっても気持ちいいから試してみない?」
ミナトがそう声をかける相手は白を基調にした浴衣を纏った美女。オリヴィアである。輝く銀髪と褐色の肌が白い浴衣によく映えている。そして普段は執事然としたスーツ姿のオリヴィアの浴衣姿は普段のキリッとした中性的な魅力とは異なり柔らかな女性らしさを湛えていた。
「それでは失礼して……」
軽く浴衣の裾をたくし上げつつその脚を温泉へと浸からせる。浴衣の隙間から覗く引き締まった美脚は完全に目福……、ちょっと栄養過剰である。
「こちらもどうぞ」
ミナトは【収納魔法】の
「これは……、素晴らしい味わいと心地よさ……」
どうやら足湯とアイスのコラボに感激をしてくれたようで非常に嬉しいミナトである。
『マスター!』
ふよん。
念話と共にミナトの頭上へ小さな球体が降ってきた。本来の虹色スライムモードとなっているピエールである。
「ピエールも足湯をやってみる?」
『アイスも食べたいデス〜』
「それはもちろん!」
力強く相槌を打つと頭上の球体が嬉しそうに飛び跳ねてミナトとシャーロットの間に着地する。そうして虹色の球体であるピエールの身体が光り輝く。
『人化の魔法……』
あまりにも周囲に使い手が多いため見慣れてしまった魔法が展開される。ピエールクラスの魔物であれば人化の魔法で衣服を纏った状態での人化が可能である。そこには可愛らしい浴衣姿の幼女が姿を現すはずであったが……、
「ピエール!?服!服は!?」
「お風呂ではないのデスカ〜?」
ミナトの隣、一糸纏わぬ姿で腰掛け、ギリギリ届く水面を足先でぱちゃぱちゃとやっている美しい幼女が現れた。
「ピエールちゃん……、やっぱりそれは反則じゃないかとお姉さんは思うのよね……」
そうシャーロットが諭すようにピエールへと語りかける。
「?」
クエスチョンマークを頭に浮かべるかのように首を傾げるピエールは可愛いのだが……。
とりあえずシャーロットが魔法でピエールに浴衣を着せ、一段低いところ腰掛けたシャーロットの膝の上から二人一緒に足湯を楽しむようにしたことで色々と納めることにするミナトであった。
「おお!これが足湯か!」
「足だけを湯につけるとは面白い習慣ですね」
黒を基調にした浴衣を纏った黒髪の美女と白地に薔薇の模様をあしらった浴衣を纏った金髪の美女もそれほど間をおかずに参戦する。
スレンダー黒髪美女の浴衣姿とスラリとした金髪美女の浴衣姿……、そしてそんなロビンとフィンが足湯とアイスを楽しむ様子。色気がヤバいのである。もはやお腹いっぱいなミナト。
しかしそれでは終わらない。
足湯に特化したこの建物随分と大きく足湯のスペース非常に大きく造られている。
結局は金髪の美女の部下たちも呼ばれることになる。二千年前にはなかった浴衣という衣服を前に大いにはしゃぐフィンの部下たち。足湯は大いに盛り上がるのであった。
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