第632話 闇魔法はやっぱり便利
『すごく攻撃されてる……。どうやって話し合えばいいのでしょうか……』
心の中でそう呟くのはミナトである。戦いの火蓋が…、というよりも一方的な魔法攻撃を受け始めてから数分。壁の上から無数の
『やっぱりこの
ミナトが操る漆黒の鎖は触手のようにうにょうにょとした有機的な動きで
【闇魔法】
ありとあらゆるものが拘束可能である漆黒の鎖を呼び出します。拘束時の追加効果として【スキル無効】【魔法行使不可】付き。飲んで暴れる高位冒険者もこれがあれば一発確保!
『どうしよう……、殲滅はダメだから、この鎖で全員を拘束して……、でも闇魔法で拘束された挙句におれの話を聞けって言って聞いてくれるものだろうか……?』
とりあえずこの壁の上からこちらを攻撃してくる者達に自分を傷つけることができる者はいないらしいと判断したミナトはどうやったら話を聞いてくれるかを考える。
『えっと……、マリアベルさん……、まだ名乗ってもらってないけどきっとあの人がマリアベルさんでいいよね……』
視線の先でミナトの様子に慄いている一際魔力量の多い老婆のことをリーダーであるマリアベルと認定するミナト。彼女さえ納得させることができれば……、と思っていると、
「あれはまさしく闇魔法、それもなんという精度なのじゃ……、こんなことができるのは……、まさか……まさかそんな……、そんなことが……」
ミナトの耳がマリアベルと思しき老婆の不審な呟きを捉える。その老婆は戦慄した表情で、
「新たなる魔お……」
その瞬間、世界の全てが静止した。
壁の上でミナトに向けて魔法を放っていた者達は何が起きたのか理解できなかった。壁の上にいたはずである。なぜ地面にうつ伏せで、顔面まで地面に押さえつけられるかのように拘束されているのか……。魔法を放つこともできなくなっている。意味が分からなかった。
「えっと、魔王じゃないですよ?」
地面へと拘束され顔を上げることもできない星
「あ、顔ぐらいは動かせるようにしましたから落ち着いて下さいね」
そう言われて地面に伏したまま顔を上げた里の魔導士達の目に飛び込んできた光景とは、
「とりあえず話を聞いて下さい。まずは自己紹介を。王都の冒険者ギルドで依頼を受けたF級冒険者パーティ『竜を饗する者』でリーダーを務めているミナトといいます」
漆黒の鎖で全身と口をぐるぐる巻きにされ宙吊りになっているマリアベルと呑気に自己紹介を始める魔王の尖兵と思しき侵入者、そしてマリアベルを拘束しているものと同じ漆黒の鎖で地面に縫い付けられている自分達の姿であった。
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