第618話 二皿目は海の味覚
「まだだ……、まだ終わらないぞ?」
どこぞのスニーキングミッションを与えられた段ボールを愛する隊員を拷問するガンマンのような台詞を呟きつつ、笑顔のミナトは次に料理へと取り掛かる。
調理台の上には玉ねぎと白ワインと大量のムール貝。ムール貝は正しく夏の味覚である。
「白ワインとムール貝はナイス……」
そんなことを呟いたミナトは大量のムールをボウルに入れて流し台に置く。ムール貝は砂抜きの必要がない。
「
ミナトの言葉と同時に彼の左手から流水が溢れ出る。さらに右手から夥しい数の極めて細い漆黒の鎖が出現する。漆黒の鎖を器用に使って貝と貝をこすり合わせ、発現させた流水できれいに洗う。この鎖にかかれば足糸の除去も楽々である。漆黒の鎖のうにょうにょとした特徴的な有機的動作さえなければ見事なものだといえる手際の良さだ。
【眷属魔法】
極めて高位の眷属を従えるという類稀な偉業を達成したことによって獲得された眷属魔法。ブルードラゴンを眷属化したため取得。
【闇魔法】
ありとあらゆるものが拘束可能である漆黒の鎖を呼び出します。拘束時の追加効果として【スキル無効】【魔法行使不可】付き。飲んで暴れる高位冒険者もこれがあれば一発確保!
鉄製の大きな鍋に玉ねぎをみじん切りにして投入。そこにブルードラゴンの里で造られた酸味が強めのこんな季節に最高な白ワイン。そのまま飲みたい気持ちを抑えつつ惜しげもなく使用する。そして例によって漆黒の炎……、全てを焼き尽くすことができる地獄の業火が着火された。
五分ほど沸騰させたらムール貝を投入。蓋をして煮る。火加減はワインが吹き上がるくらいに終始強火。火の通りが均一になるように一、二度は上下をかき混ぜ七割くらいの殻が開いたら火から下ろす。固くなる前に火から下ろすのがポイントだ。
漆黒の鎖を上手く使って貝だけを別の器に取り分け、ムール貝からの濃厚な出汁と適度な塩味が溶け込んだ鉄鍋の煮汁に生クリームを投入。ムール貝の風味が効いた玉ねぎと白ワインと生クリームの美味しいソースが出来上がる。
「ここまでがプレパレというやつで……」
ミナトはそう呟きながら二、三人前サイズの鍋を用意。二、三人前のちょうどいい感じのムール貝とソースを鍋に入れて軽く火入れし完成させる。これは人数分の個別作業だ。そうして料理が出来上がる。
「ムール貝の白ワイン……、ソースもあるから白ワイン煮ってとこかな?ムール貝の白ワイン煮完成!」
笑顔でそう宣言するミナトであった。
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