第558話 ミナトはピエールに指示を出す
帝都グロスアークはその周囲を高い城門に囲まれている。帝都への出入りは城壁に設けられた城門を通る必要があるが、通ることができる城門は限定されているようだ。
そしてミナトに視線は街中に向けられる。
『帝都もファナザの街と同じように街の中に城壁があるらしい……』
国境に街であるファナザは、スキルや魔法の才がない者住んでいる第三地区、特殊なスキルや魔法の才がある者が暮らす第二地区、貴族やこの街の領主が暮らす第一地区がそれぞれ城壁で区分けされていた。
それと同じ構造が帝都グロスアークでも採用されているとのことである。
『貴族がいて身分の差があることも分かるけど、あまり気持ちのいいものじゃない……』
心の中でミナトが呟く。
『ルガリア王国とかグランヴェスタ共和国、それに東の沿岸にある港湾都市国家とかは比較的みんな自由に暮らせる。だけどこの国ほどではないけど身分に厳しい国はあるわよ』
シャーロットが念話でそう言ってくる。
『うむ。我もいくつかの地上の街を見てきたが王都が最も暮らしやすいと思っている』
『ん。ご飯は美味しいしマスターのBarもある。王都はサイコー!』
『王都はスバラシイ環境デス〜』
デボラ、ミオ、ピエールは王都の暮らしが気に入っているらしい。
「いつでも
もし何か厄介ごとに遭遇したのならいっそのこと
【転移魔法】
眷属の獲得という通常とは異なる特異な経緯から獲得された転移魔法。性能は通常の転移と同じ。転移元と転移先の双方に魔法陣を設置することで転移を可能にする。転移の物量および対象に関して様々な条件化が全て術者任意で設定可能。設定した条件を追加・変更することも可。魔法陣は隠蔽することも可。
帝都への入る手続きカーラ=ベオーザにお任せなミナトたちが手持ち無沙汰にしていると……、
「随分と威圧的な馬車だ……」
そう呟くミナトは視線の端で一台の馬車を捉える。
その馬車は八頭立ての大規模な造りであり、黒く塗られた八人以上が乗れそうなキャビンには炎のような模様が彫り込まれそこにはびっしりと何やら文字が描かれていた。
城門に配置されている神殿騎士たちが最敬礼で迎えるその馬車は速度を落とすことなくすんなりと城門を通過する。
「あれはバルトロス教でもかなり高位の神官が使用を許されている馬車ですね。重要な人物か物資を運んでいるのではないでしょうか」
さすがA級冒険者というべきかティーニュがそう教えてくれる。
『この城門はファナザの街に続いている。それ以外に大きな分かれ道はなかったような……。おれ達と同じ方向から来た?街道にそんな気配はなかったけど……。別のルートがあったとか?ファナザの街から何かを運んできたのか……?』
『ミナト!あの馬車は私とミオの人形を積んでいるわよ』
『え?』
『デボラを積んでいないってことは誰かが雷撃の餌食になったんじゃない?』
黒い笑顔で念話を飛ばしてくるシャーロット。
『あのヒムリークとかいう枢機卿が再起不能になったのかな……?ということは残りの二人は帝都の誰かに上納……?やっぱりロクな枢機卿じゃなかったってことか。雷撃を喰らっていますように!』
心の中で手を合わせてそう祈っていると、街へ入ることが許されてウッドヴィル家一行が移動を始める。
国境の街ファナザ同じで一部の騎士とポーター達を第三地区に残し第二地区へと移動することになるのだが……、
『絶対に何かが起こる!この街で何が起こっても驚かない。ピエール!よろしくね?』
『承知しまシタ〜』
ミナトの外套から周囲の色に擬態したピエールの分裂体がそれはもう大量に放出される。伝説の存在とされるエンシェントスライムでありミナトにテイムされてさらなる高位の存在となったピエールが本気で擬態したのであればそれを見破ることが出来る者など存在しない。
帝都グロスアークの第三地区は広大である。しかしそんな第三地区は瞬く間にその全域をピエールの分裂体で埋め尽くされることになった。そのことに気付いているのはミナトとシャーロットたちのみである。
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