第546話 女性のみの騎士団
ミナトの眼前に現れたのはそれはそれは見目麗しい鎧姿の女性たちで編成された騎士団であった。人族が中心のようだが猫や犬、狼っぽい耳も見えるので亜人も数名いるらしい。
「まさかの全員が女性……?テイムした時にスキルが何かやった……?」
そう呟く。ミナトが使用できる【眷属魔法】である
【眷属魔法】
極めて高位の眷属を従えるという類稀な偉業を達成したことによって獲得された眷属魔法。眷属化した存在を強化する。眷属を確認して自動発動。強化は一度のみ。実は強化の度合いが圧倒的なので種を超越した存在になる可能性が……。
「マスターは何を仰っているのですか?私たちは最初から女性だったではないですか?我が騎士団、その成り立ちなどはとうに忘れてしまいましたが、私たちは女性のみで構成された騎士団です!」
そう胸を張るのは禍々しい瘴気を放つ漆黒のスケルトン状態からは想像につかないほどに変貌したフィンである。
『いや……、確かに華麗な剣術を使うなーとは思ったけど、あなただって腰に魔剣を装備したガッツリ鎧姿のスケルトンだったじゃん……、女性とは気づけなかったよ』
心の中でミナトからツッコミを入れられるフィン。そんな彼女は鎧姿に輝く金髪、透き通るような白い肌、そしてその美貌、さらには騎士としての意志の強さを感じさせる瞳も相まって騎士団長らしい堂々とした気品を湛えている。
「きゃー!久しぶりの生身です!生きていた頃の記憶なんてほとんどないですが感激です!」
「あなたってそんなに可愛かったかしら?グールの印象が強すぎて覚えていないのよねぇ」
「あなただって素敵よ!スケルトンだなんて言わない限り分からないわ!」
「風が涼しい……、ゾンビでは感じることができなかったこの感覚……、最高だ!」
「レイスの状態が長かったですから〜、自分の足で立つというのは新鮮な感じですぅ〜」
「あ、声が聞こえる!」
人族の姿となったフィンの配下たちが驚きつつも楽しそうに話し始めるとこれまで聞こえなかった声がミナトの耳に届く。
「人族や亜人の姿になれたから声帯がキチンと機能しているようね」
そう言って頷くのはシャーロット。
「シャーロット……、ロビンと同じって考えるときっとみんな強化されて……?」
ミナトの問いに、
「そうね。フィンのこれまでの種族はスケルトンだったの。でもあの色と強さから考えて普通のスケルトンじゃなくて特殊な個体だったと思う。でも今は種族が正式に
そう返すシャーロット。
「そして戦闘時には……、ロビンと同じように……?」
おそるおそるそう問いかけるミナト。
「できるんじゃないかしら?フィン?本気で闘争に臨むときはどんな姿になるの?」
しれっとそう返してフィンに確認する美人のエルフ。
「もちろんこちらです!」
フィンがそう言った瞬間にフィン以下の全員が黒い霧のようなものに飲み込まれ多数のアンデッドが顕現した。
「なんかアンデッドの姿も強くというか厳つくなっている気がするというか……、そしてさっきまで美人だった女の子がガッツリと損傷激しいゾンビになるって……」
「素晴ラシイチカラデス!コノチカラヲ授ケテ下サッタマスターニ感謝ヲ!」
遠い目をするミナトの前に改めて跪く極めて強力なアンデッドによって構成された騎士団一同。
『騎士団の名前とかあったほうがいいよね……、あ……、王都で冒険者たちが彼女たちに会ったらどうしましょう?その美貌に惹かれた後、正体を明かされて深刻なトラウマに……、ロビンの時以上のインパクトがありそう……。今のうちに謝っておきます。ごめん』
心の中で王都の冒険者たちに合掌を捧げるミナトであった。
そうして改めて酒宴を始める運びとなる。ミナトが必死にカクテルを造り、人族や亜人の姿を取り戻した騎士団のメンバーはカクテルを楽しみつつ、シャーロットの
「ふぅ……」
時刻は深夜であろうか……、ミナトがカクテル造りをひと段落させ全員がまったりとなった頃……、
「ミナト!」
「うむ。マスターよ」
「ん。まだ終わっていない」
「そうですよ〜」
シャーロット、デボラ、ミオ、ナタリアがそう言いながらミナトの下へとやってくる。その周囲にはオリヴィア、ピエール、ロビン、フィン、そしてファーマーさんが笑顔で居並ぶ。さらにその周囲には騎士団のメンバーたち。
「シャーロット……、やっぱり?」
既に諦めモードのミナトである。
「もちろん!ミナト!次はあなたのステータス確認よ!」
とびっきりの笑顔でそう言ってくるシャーロットの言葉に覚悟を決めるミナトであった。
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