第537話 スケルトンのお酒(二つ目)
漆黒のスケルトンが統率するアンデッド騎士団と共に封印されていた三種類のお酒。
戦闘に興じている漆黒のスケルトン、ナタリア、ロビン、ファーマー以外は一つ目の極上貴腐ワインと王都で買い求めたレバーパテの組み合わせを存分に楽しんだ。
そして二つ目のお酒である長期熟成させたブランデーを小さめのワイングラスに注ぐミナト。この時点で既に香りが素晴らしい。
ブランデーはマールと同時期にブルードラゴンとアースドラゴンが協力することで造ること自体はできた。だがブランデーには熟成が必要でありすぐに美味しく楽しむことができるわけではない。
アースドラゴンがウイスキーやブランデーの熟成を早める魔道具を製作してくれたが、その成功率は未だ五パーセントを切っている。失敗した場合、ウイスキーやブランデーが危険な液体となってしまうとのことだ。
この失敗する確率は魔道具を使用するお酒の量に影響しないということでミナトはBarで使用するための最低限を確保した後、ごく少量のブランデーを魔道具の研究に使用しそれ以外は自然熟成を行うことに決めていた。
そのためミナトにとって熟成したブランデーは未だ貴重品である。
そんなミナトが並ぶグラスに注ぐのは百年もののブランデー。ミナトがかつてパリに赴いた際、当時の二つ星レストランのブランデーリストには二十世紀初頭のブランデーが載っていた。もちろん普通にオーダーできたのだが、
『あれはちょっと手が出なくて一九六〇年代のブランデーに挑戦したんだっけ……』
一九六〇年代のブランデーも十分に美味しかったし東京で飲むことを考えれば相当にお得な金額だった。そんなことをふと思い出すミナト。
あの時は飲めなかったブランデーとおそらく同格のブランデーが眼前に並んでいる。
シャーロット、デボラ、ミオ、オリヴィア、ピエールといった面々も興味深々な様子でグラスを見つめている。
「これが漆黒のスケルトンさんたちと共に封印されていた二つ目のお酒。百年もののブランデーってことになるかな?さあ、飲んでみよう!」
ミナトの言葉にグラスを手に取ったシャーロットたちがそのグラスを掲げる。
「素晴らしい出合いに!」
「ミナトに!」
「うむ。マスターに!」
「ん。マスターに!」
「ここはマスターにですね!」
「マスターにデス〜」
少し気恥ずかしい乾杯の図式なってしまったが、そうしてまずはブランデーの香りをしっかりと確かめるミナト。ブドウ由来の華やかで芳しい香り、そしてそこに樽の香りが加わり華やかさに厚みを持たせている。
一口含むと口腔と鼻腔がその華やかな香りが広がった。見事なブランデーに感動を覚えるミナト。
『これでサイドカーとかホーゼスネックを造ったら怒られるのかな……?百年もののブランデーでカクテル……。勿体無い気がするけど沢山あるみたいだし異世界だし……』
ブランデーはそのままで完成されているし間違いなく美味しい。だが徐々に心の天秤がカクテル製作へと傾くミナトであった。
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