第531話 アンデッドの話
未だ瘴気が残っているのか太陽は燻んだオレンジ色のままで空も血で染められたかのように真っ赤である。
「えっと……、二千年前の大戦の時にこの辺りで暴れていたというアンデッドがあなた達というのは間違いありません?」
そう問いかけるミナトの眼前には跪いて首を垂れている夥しい数のアンデッドたち。その先頭にいるのが跪きながらも強烈な武威を放ち続ける全身が漆黒かつメタリック的なコーティングをされたかの如き骨格で構成されているスケルトン。
そしてどういうわけかここにいるのはミナト一人。シャーロット、デボラ、ミオに加えていつのまにか外套だったはずのピエールまでその姿を消している。その状況に何やら既視感を覚えるミナト。これまでのことを踏まえてとりあえずその辺りは気にしないことにする。
「ハッ!真ナル魔王サマ!暴レテイタトイウノハ少々心外デスガ、コノ一帯ハ我ラノ土地デアリマス。二千年前ノ大戦ト仰ラレタガ、ソレハカノ
真なる魔王やら
「そうなるかな……。かつて存在した魔王は大戦があった二千年前に消滅したとされているよ。あなた達は魔王の配下だったの?魔王のスキルは強制的に魔物を従えるものだって聞いたけど……」
そんなミナトの言葉に漆黒のスケルトンは顔を上げないままに首を振る。どうやらミナトの話を否定したいらしい。
「真ナル魔王サマ!二千年間モ眠リニツコウトハ我ラモソコマデハ想定シテオリマセンデシタ。ソシテ訂正サセテ頂キタイノデス。我ラハカツテ魔王側トシテ戦イマシタガ、魔王ノスキルノ影響ハ受ケテオリマセン!」
思わぬ回答に驚くミナトは、
「魔王のスキルの影響を受けていないのに大戦に参加した……?それも魔王側から……?」
疑問符がいっぱいの表情となる。しかし、
「生前ノ記憶ナド残ッテハオリマセンガ、我ラ騎士団ハ闘争ヲ欲スルノデス。我ラハ闘争ノ中ニイテコソ己ノ存在意義ヲ実感スルノデス!ソシテカツテノ魔王ハ我ラニソノ闘争ヲ用意シマシタ」
『ものすごーく戦闘狂の騎士団だったらしい』
ミナトがそう解釈することにして、
「そうだったんだね……」
とりあえずそう返す。
「二千年モノ月日ガ経ッテイタトハ……。真ナル魔王サマガ大戦ト呼バレタアノ戦イハ我ラニトッテ充実シタ日々デシタ……。コノ辺リニ迷イ込ンダ冒険者ヲ保護シタ時ニハ、探シニヤッテキタ世界ノ属性ヲ司ル竜ト戦ウコトガデキマシタシ……」
「え?」
ちょっと待ってほしい。何か引っ掛かる表現が入っていたことに気付くミナト。ミオは冒険者を救助に行ったと言わなかったか……、
『その前にアンデッド達が保護していた?』
なぜ冒険者の救助に行ったミオと冒険者を保護したアンデッドが戦うことになるのか……。
「カノ
跪いたまま当時を思い出したのか少し嬉しそうにそう言ってくる。どの辺りが嬉しいとなる要素なのかミナトにはイマイチよくわからない。
「シカシ
「そういうことね……」
さらに色々と聞いてみてミナトは当時の状況を大体把握し理解する。
どうやらこのアンデッド騎士団は純粋に闘争を楽しむ集団であるらしい。魔物であるにも関わらずかつて魔王によるスキルの影響を受けることなく、闘争を欲してかつての大戦に参加したとのことだ。魔王によるスキルの影響を受けていなかったので他の魔物のように市民を狙ったりはせず強者との戦いのみを欲していたのだとか……。冒険者を保護したというのも斃す相手と認識せず困っていたので助けようと思っただけのようである。ただその捜索にやってきたブルードラゴンと一戦交えることができたのは僥倖であったらしいが……。
『それにしても盟友で後に好敵手となった
ミナトがそんなことを考え提案しようとした時、
「デハ真ナル魔王サマ!コノ私ニ一手御指南ヲ頂キタイ。ソノ信ジラレナイホドニ溢レンバカリノ圧倒的ナ闇ノ魔力!ソレダケデモ我ラガ主君ニ相応シイ証明トナリマスガ、ヤハリソノ実力ヲコノ身デ感ジナクテハ!」
そう言って立ち上がる漆黒のスケルトン。空洞である筈のその双眸には闘争にかける執念とも思われる光が宿っていた。
『やっぱりこれは避けられないのかな……?』
いつものごとき展開に往生際悪くそう心の中で呟くミナトであった。
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