第524話 ミナトはオーガに魔法を使う
オーガ、それはどこの蛮族かと思わせる毛皮を纏い、鬼を思わせる赤い皮膚と醜悪な風貌、そして二本のツノを持ちその巨体に相応しい膂力と似合わない素早い運動能力とを兼ね備えた厄介な魔物とされている。
そんなオーガの群れを前に漆黒の
この短剣は鉄鉱石に微量のミスリルを加えた合金を打って造られた逸品。ミスリルが含まれた上質の鉄鉱石を贅沢に使いグランヴェスタ共和国の首都ヴェスタニアで職人をしているアイリスに頼んで造ってもらった品である。
そしてそんなミナトに寄り添うようにオーガの群れを前に佇むのは絶世の、もしくは傾国のと表現されるのが相応しいと誰もが思ってしまうほどの美形のエルフ。美しい金髪を靡かせるシャーロットである。
ミナトとシャーロットによる着地の衝撃に一瞬たじろいだ様子を見せていたオーガ達だが今は戦意のこもった眼差しを二人へと向けている。
『舌舐めずりしている奴もいる……。この世界でもゴブリンはおれの知っている異世界ファンタジーと似ているらしいけど、オーガって好んで人族とか亜人の女性を狙ったりするのかな……。あ、そういえばオークって普通に豚肉として売られているけどあれってどうなんだ?』
そんな多少余計なことを考えつつ、ミナトの周囲に次々と水の塊が出現する。それは魔法は貴重な才能とされるこの世界において水魔法の基礎的とされる
『オーガの背後には樹々があり炎系魔法は延焼の可能性がある。闇魔法はまだちょっと秘密かな?』
そんなことから【眷属魔法】
【眷属魔法】
極めて高位の眷属を従えるという類稀な偉業を達成したことによって獲得された眷属魔法。ブルードラゴンを眷属化したため取得。
しかしそんな水に塊を前にしたオーガ達は醜悪な顔面をさらに醜悪に歪めて笑みをつくった。どうやら水塊を
ちなみに突然現れたミナトとシャーロットを凝視している砦の騎士達もなぜ
だがそれらは大きな間違いであるミナトが使った魔法は
こちらを完全に舐めた態度をとるオーガの群れにミナトが水塊を打ち出した。
それはミナトに嘲きった態度をとっていた複数体のオーガの顔面へ素晴らしいコントロールで命中し……、
ゴキッ!
グチャッ!
ボグッ!
グシャッ!
ドンッ!
バシュッ!
もの凄くイヤな効果音と共に一気に六体ものオーガの頭部がとても表現できないスプラッタな形状に変化する。
『あ、最後のはちょっと魔力を込めすぎた?頭部が消し飛んじゃってる』
ミナトはそんなことを思っているが、オーガの群れも、砦から様子を見ていた騎士達も完全に言葉を失って固まってしまう。
「あいかわらず硬い
こやかにそう言ってくれるのはシャーロットのみ。そしてそんな余裕にあるミナトとシャーロットを前にオーガ達が一歩退いた。対峙している相手がヤバいクラスの化け物だとようやく認識したらしい。そんなオーガ達を前にして、
「ふふ……、逃げれるなんて思っているのかしら?私の風魔法はミナトほど優しくないわよ?」
もの凄い笑みでオーガ見据える美形のエルフ。ミナトも逃げ出したくなるほどの迫力である。
「
オーガの群に滅びを与える言葉がその可憐な唇から紡がれるのであった。
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