第517話 領都イースタニア到着
「ここがバウマン辺境伯家の領都イースタニアか……」
「なかなかの街ね。辺境伯領だけあって大きいし城壁がしっかりしているわ」
「うむ。そして活気がありそうだ」
「ん。賑わってる」
『ふよふよ』
そんなことを話しているミナトたちの眼前には高い城壁と開かれた大きな門そしてその向こう側には美しい建物が並ぶ街並みが広がっていた。
「ウッドヴィル公爵家の領都アクアパレスより規模は小さいですがルガリア王国西部の街としては最大規模の街の一つと言えるかと思います」
そう教えてくれたのはA級冒険者のティーニュ。現在ではウッドヴィル家との専属に近い契約によって王都を中心に活躍する彼女だがそれ以前は各地を旅していたらしくこういったことには詳しいらしい。
「ティーニュさんはこの街に来たことがあるんですか?名物とかあったりします?」
ミナトからのそんな問いに、
「ええと……、ダンジョンが近くに複数あったはずですし、二日あればクラレンツ山脈にも行くことができる関係で魔物の素材が豊富に取引されているはずです。魔物の肉を利用した料理屋が多かった印象がありますわ」
そう回答するティーニュ。その内容にシャーロットが、
「クラレンツ山脈ではどんな魔物が出現するのかは知ってる?」
そう問いかけた。
「私自身はクラレンツ山脈に足を踏み入れたことはありません。ですが私もカレンさんから情報と同じで主に熊や狼といった獣に近い系統の魔物が多いと聞いたことがありますけど……?」
そんな回答を聞きながら首を傾げてゆくシャーロットにティーニュが少し困ったような表情になる。
「ありがとう。今はそれで十分よ。それとね……」
シャーロットは話題を変えティーニュに領都イースタニアのことをあれこれと質問し始める。
『やっぱり気になっているのかな?』
そう心の中で呟くミナト。
ブルードラゴンの里でシャーロットから聞いた話によると魔王がこの世界に混乱と破壊をもたらした二千年前の大戦時、クラレンツ山脈は強力なアンデッドのナワバリであったという。
魔王の影響を受けてしまったアンデッド達は当時のデボラやミオであっても厄介と感じるほどの存在だったらしい。
魔王が消滅した後の混乱でそのアンデッド達がどうなったのかは分からないらしい。だがそんな強力なアンデッド達姿を二千年が経ったとはいえ全く見かけなくなったことにシャーロットは納得がいかないようである。
『二千年前を知っている者にあの山脈を越えて人族や亜人が行き交っているって言っても信じてくれないと思うわ』
シャーロットはそう言っていた。
『今回の目的はクラレンツ山脈の調査じゃないけどその辺りは少し注意を払うことにしよう』
ミナトは山脈越えの懸念事項に優先度は高くないまでも『アンデッド達の行方』という項目を追加するのであった。
フラグになっているかも……、ということについては考えるのを放棄してとりあえず今日の宿と食事について考えを巡らせるミナトであった。
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