第505話 旅の予定を確認する
ミナトがその後各種のドラゴン達にカクテルを造りまくったからか、ロビンとファーマーさんに始まり腕に覚えのあるアースドラゴンも参加した短剣による的当て対決が想像以上に白熱したからか、並べられた料理の完成度からか、とにかくブルードラゴンの里における飲み会は盛り上がった。
『大規模魔法も使えるが闇魔法で作り出した短剣の二刀流とその短剣を無限に生み出しての投擲は凄かったってシャーロットは言っていたけどファーマーさんの投擲は本当に凄かった』
ミナトによる宴の感想はそれに尽きる。ロビンや武器特化のアースドラゴン達の投擲も見事だったが、ファーマーさんの投擲は完全にあの神父様のスタイルだったからだ。
『暴力を振るってよい相手はバケモノ共と異教徒共だけです……、とか言って欲しい……』
そう思ったことは秘密である。
「ところでミナト、次の私たちの目的地って辺境伯の領地だったかしら……?」
会場の雰囲気がまったりモードに移行したところでブランデーが注がれた小さめのワイングラスを片手にシャーロットが聞いてくる。
「バウマン辺境伯領だね」
そう答えるミナト。
アクアパレスからバウマン辺境伯領の領都であるイースタニアという街までが約十日、そこから国境にあるというマルトンの砦までは五日だと説明する。
「今回は通り抜けるだけだし、騎士達は労いの席とかが設けられると思うけどおれ達は関係ないんじゃないかな?」
シャーロットたちの美貌を目当てに面倒な貴族に絡まれる的な展開にはならないだろうと予想するミナト。
このバウマン辺境伯という人物は相当な切れ者らしい。辺境伯というと武力に秀でた国防の要といったイメージだが、クラレンツ山脈を挟んでいるとはいえ神聖帝国ミュロンドのような主義・思想を大きく異にする国と国境を接し、交流を行う辺境伯には武力以上に政治・文化の知識と共に交渉力が求められるらしい。そして現辺境伯であるバウマン卿はその役目を見事にやり遂げておりルガリア王からも評価が高い人物なのだとか。
「優秀な貴族にはちょっと興味もあるけどね。そして予定通りに行けばクラレンツ山脈を七日で越えて、神聖帝国ミュロンドの国境の街に到着する予定だったかな?」
宰相さんの話ではクラレンツ山脈には剣呑な魔物多いということだったので戦闘が発生することをミナトは予想していた。
「クラレンツ山脈の魔物ってアンデッドじゃないのよね?」
不意にそんなことを呟く美人のエルフ。
「シャーロット?カレンさんの話では獣系の魔物が多いって聞いたけど……?どうしてアンデッド?」
シャーロットの言葉にそう返すミナト。
「私が王都に来る時、あの山脈は迂回しから現状は分からないけど、二千年前くらいだとあの辺りは強力なアンデッドのナワバリだったのよね」
「うむ。面倒な連中であった。魔王の影響を受け凶暴化してしまいあの山脈の周囲は人族や亜人は立ち入り禁止になったのを覚えているな」
「ん。ボク達の里が近かったから迷い込んだ人族の救助に行ったのを覚えている!」
シャーロットにデボラとミオがそう続けて来た。
「そのアンデッド達ってどうなったの?」
ミナトの質問にシャーロット首を振る。
「魔王が消滅した後はいろいろと混乱が続いたからよく分からないのよね。二千年前を知っている者ならあの山脈を越えて人族や亜人が行き交っているって言っても信じてくれないと思うわ」
「そうなんだ……」
そう返すミナトだがここでそんな話を聞いて大丈夫なのかという考えが頭を掠めた。異世界ファンタジーのお約束な感じがする。
そんなミナトの心中に気が付いたのか、
「あ、ごめんなさい、これってミナトの言っているふらぐってやつだったかしら?」
無邪気な笑顔と共にそう言ってくる美人のエルフ。今のミナトたちを力でどうこうすることは非常に難しいことはミナトもよく理解はしているのだが、
『何も起こりませんように……』
笑顔でブランデーを嗜んでいる美人のエルフの姿を目福であると感じつつ心で手を合わせるミナトであった。
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