第502話 ブランデーに挑戦
ウイスキーやブランデーの熟成を早める魔道具をブルードラゴンとアースドラゴンが共同開発したらしい。
「それはスゴい!試作品ってことだけど実際に使ってみた?結果はどう?上手くできたのかな?」
興奮気味に問いかけるミナトだが少女の姿をしているブルードラゴンがシュンと項垂れる。
「熟成させることが可能であることは確認しています……。ただマスターから教えて頂いた言葉で言うところの蒸留酒における樽での熟成については既にウイスキーで実践されているアースドラゴンさん達でも全ての仕組みを解明できているわけではありません。そのため成功率が非常に低い結果となっています」
その言葉と共に他のブルードラゴン達が一つの樽を運んでくる。
「これはブランデーの熟成に成功した樽です。私どもで樽の大小だけでなく様々な状況で確認しましたが、現在の結論としましては樽の大小や外部の環境に関係なく成功率は五パーセントを切ると予想されています。失敗した樽では中身は全て飲むことが不可能な危険な物質に変異していました」
その言葉にミナトは複雑な表情になる。
「五パーセントを切る……、つまり二十回に一回も成功しない可能性が……、それはちょっとモッタイナイかも……」
ミナトの呟きにブルードラゴンが反応する。
「マスターでしたらそう仰ると思っていました。今回はウイスキーでの使用は行わず、ブランデーもこの一樽を造った時点で運用は中止しました。お酒の量に影響されないようなので今後は少量を使用した研究・改良の計画を立てています。また正規の方法で多くの樽を仕込みましたので数年後には本格的にお楽しみ頂けるかと思います」
その回答を笑顔で了承するミナト。
『魔道具は凄いけどやっぱりお酒の熟成は難しいみたいだ……。前にいた世界でも樽によるウイスキー熟成のメカニズムは完全に解明はされていなかったはずで……』
そんなことを考えるミナトだがとりあえず運ばれてきた魔道具による熟成に成功したブランデーが気になる。
「ではそのブランデーを味見させてもらえるかな?」
「畏まりました!」
ブルードラゴン達が樽に入ったブランデーらしき琥珀色の液体を瓶に移し替えテイスティンググラスにジガーとも呼ばれるメジャーカップ注いでくれる。なかなかに上手な身のこなしに少々驚くミナト。メジャーカップを使っているのは知っていたがここまで上手く使っているとは知らなかったのだ。
そうして琥珀色の液体が注がれたテイスティンググラスをこの場にいる全員が掲げて、
「「「「「乾杯!」」」」」
そう宣言したもののミナトは慎重に香りを確かめる。葡萄に由来するフルーツの甘い香りの中に樽による熟成が加わったウッディさを感じるそれはこのお酒がブランデーであることを実感させてくれる。そうして一口……、ゆっくりと口に含む。アルコールは強めのはずだが、それをそこまで感じさせることなく舌に感じるまろやかな甘みと重厚感を感じさせるほのかな苦味。そして鼻口に抜ける花のような鮮やかな香り。ブランデーはどこまでも熟成させることが可能であるとは言うけれど、
「美味い……。そこまで長く熟成させたという感じではないけれどこれは美味しいブランデーだと断言できる!とうとうブランデーを手に入れた……」
笑顔でそう語るミナトの脳内にドラゴンを探求するゲーム第五作内で大切な仲間が加入した時のミュージックが高らかに鳴り響く。
「美味しい!ウイスキーとはまた違って優雅で柔らかいけど鮮烈さもあるわ!」
「うむ!これは素晴らしい味わいだ。そしてこの香り!ウイスキーが穀物の芳醇な味わいだとするとこれは葡萄によるエレガントで高貴な香りと言える!」
「ん。とても素敵な香り!ボクは大好きかもしれない!」
「これも美味しいでス〜!」
当然の如くシャーロットたちも気に入ったらしい。そうであればミナトの提案は決まっている……、
「よし!このブランデーを楽しんで今夜はさらにカクテルも造ろう!」
ミナトの言葉に呼応するかのようにブルードラゴンの里が大きな歓声に包まれるのであった。
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