第488話 神聖帝国と『光のダンジョン』
第一王女様からの依頼内容は『ミナトの思想とは絶対に相容れない教義を信仰している神聖帝国ミュロンドへとウッドヴィル家の騎士団およびA級冒険者のティーニュと共に赴き、第一王女であるマリアンヌ=ヴィルジニー=フォン=ルガリアの回復を祝うイベントのためルガリア王国へと招かれる神聖帝国ミュロンドの第三王子であるジョーナス=イグリシアス=ミュロンドの護衛』という内容であった。
ミナトは依頼を受けることと、自身のパーティである『竜を
そうしてウッドヴィル家の会議室で依頼料に加えて契約上の細々とした条件について冒険者ギルドの受付嬢であるカレンさんとその詳細をつめるミナトだが……、
『シャーロット……、神聖帝国の帝都に光のダンジョンがあるって偶然なのかな?あと今のおれだと潜ることが出来ないっていうのはなぜ?』
気になったことをシャーロットに尋ねているだけなのだが、カレンさんの話にきちんと対応しながらシャーロットと普通に念話を交わそうとするミナトはちょっとヤバいことをやっている自覚はある。
初めてできた時は電脳化して死が曖昧になったアニメの世界で見た会話を思い出してしまったミナト。普通の人族であれば絶対不可能な芸当ではあるのだが、何故か自然とできてしまったのだ。
身体的な耐久力はまだまだのミナトだが少しずつ人族を辞めていることは間違いないらしかった。
『うーん……、宰相さんが神聖帝国ミュロンドが二千年って自称しているけど歴史にその名が現れたのは五百年前の資料からって言っていたけど、あの国の建国史っていろいろと分からないことだらけらしいの。私がミナトと出会う前にいたアムル帝国でもその前も神聖帝国ミュロンドなんて名前は聞いたことがないのよね』
ミナトと出会う前のシャーロットは直近の数百年をアムル帝国の魔法研究所で魔法の研究をしていたが出奔。帝国としては軟禁していた認識だがシャーロットは自分の意志で研究所に居ただけなので出奔をめぐってトラブルに発展、犠牲者こそ出なかったものの暴れたシャーロットによって魔法研究所は壊滅的な被害を受け、大陸に覇を唱えるために数百年に渡って蓄積されてきた帝国の魔法技術も消滅させられている。
『うむ。我もここ千年は里を出ていなかったが、多少の交易があった人族からそんな国名は聞いたことがないな』
デボラたちレッドドラゴンの里は王都から北へ数日、北方にそびえ立つ大山脈にある火山エカルラートの地下に広がる火のダンジョンにある。人族や亜人が容易に辿り着ける場所ではないが古くから転移の魔法陣があり、それが大山脈地帯の北側へと繋がっていた。そこに小さな集落のようなものを造り小規模ではあるが交易を行っていた。訪れる商人たちはレッドドラゴンのことを山奥に住む少数の部族とでも思っているらしい。
『ん。ボクはときどき地上に行っていたけど名前を聞いたくらい?でもここ数百年のことだと思う』
ミオがそう言ってくる。ミオたちブルードラゴンの里がある『水のダンジョン』はウッドヴィル公爵家の領都であるアクアパレスの地下にあるが、アクアパレスはかつて古都ガーライと呼ばれていた頃から集落のある歴史の長い街らしくミオたちブルードラゴンはときどき美味しいものなどを求めて散歩をしていたらしい。そんなこともあってかウッドヴィル家が管理する神殿には
シャーロット、デボラ、ミオの話からでは神聖帝国ミュロンドの建国についてはよく分からなかった。
『だけど光のダンジョンの入り口って結構特徴的なのよね……。それを誰かが神聖なものって感じちゃって変な宗教が生まれた可能性は否定できないわね……』
神妙な面持ちになって年話を飛ばしてくる美人のエルフ。その点については認識が同じなのかデボラとミオも頷いている。
『特徴的な入り口って……?』
何か嫌なものを感じてしまうミナト。
『説明するのは難しいわ。実際に見るまでのお楽しみってことにしましょう。それと光のダンジョン内は魔道具とかの防御に関係なく認識能力とかにかなりのデバフがかかるわ。今のミナトだと真っ直ぐ歩くのも難しくなる可能性があるわね。それにこれは私の予想だけどあのダンジョン内では闇魔法は使えない。もうちょっとミナトの能力を高める必要があるわ。多分、本格的に潜るのは最後になると思うのよね』
シャーロットからのこの念話にもデボラとミオがコクコクと頷いている。周囲が黙って頷くだけの美女たちに少し不思議そうな視線を送っているのは秘密である。
『そうなんだ。それは今のおれにはちょっと大変そう……、というかいつかは潜るんだ……、それにしてもこの世界の光属性ってタチが悪いよね……』
念話でそう呟くミナト。光属性の魔法には禁忌とされる
『でも世界の属性を司るドラゴンを全てテイムするといいことがあるから頑張りましょうね?』
『うむ。ファイトだ!マスター!』
『ん。ボクもお手伝いする!』
笑顔と共に念話で言ってくる二人の美女と一人の美少女。思わず頷いて了承してしまうミナト。そんな会話をしていると、
「はい。これで契約完了となります!それでは宜しくお願いします」
笑顔のカレンさんがそう言って頭を下げるのであった。
ふよふよ〜。ちなみに普通のスライムに擬態しているピエールはミナトの肩の上でずっと気持ちよさそうに揺れていた。魔物を不浄の存在として忌むべきものと定義している国にピエールを連れて行くと言ってもここに集まった面々は何も言わなかった。恐らくピエールがただのスライムではないことに薄々勘付いてはいるのだろう……。そんなことを思いつつミナトたち一行はウッドヴィル邸を後にするのであった。
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