第487話 依頼受託
『受けても問題ない……。マリアンヌさんの意中の人であれば助けてあげたいし……』
などと考えているミナト。マリアンヌさんもBarの常連さんである。大切な常連さんのお願いだから何とか助けになりたいと思うミナト。だが今回はその続きがある。
『ジョーナスさんって海沿いの都市国家にいたってことは……、海水浴っていう文化がないくらいに海は危険って話だったけどきっと港があって……、魚介類はブルードラゴンの里でゲットできるけど、もっといろいろな食材とかお酒とか……、確かシャーロットが大陸の東では醤油があるって言っていた気がする……。もしかすると米なんてものも……?ジョーナスさんが知っているなら……』
そのことである。異世界に転生して黒髪黒目以外の日本人的な容姿は失ったがミナトの嗜好は間違いなく日本人のそれなのだ。米や醤油が手に入るというのであれば是非とも入手したいミナトである。異世界ファンタジーの定番となっている米と醤油との出会いがついにミナトたちにも訪れるかもしれない。もしそうであればジョーナスさんの身柄は完璧に保護しなくてはいけない。密かに闘志が燃えてくる。
『ミナト……、念話が漏れているわよ?コメ?ショウユ?確かミナトが欲しいって言っていた食材と調味料だったかしら?』
米と醤油への願望が漏れてしまったらしい。
『米も醬油も和食には欠かせないからね!』
『じゃあ、米や醤油を探すためにも今回は旅をする意味がありそうね、それにジョーナスって人が知っているかはともかく、彼女とは私もBarで時々会話もしていたしこの前の打ち合わせでさらに仲良くなったから彼女を助けてあげたいと思うのよね』
そうシャーロットから念話が届く。シャーロットは前向きらしい。
「うむ。我はマスターの判断に従うまでだ!」
ブレないデボラがそう言ってくる。
ふよふよ……。ピエールはミナトの肩の上で静かに揺れている。特に意見はないらしい。すると、
「ん!ボクはマスターの命令に従う。だけど今回はマスターが受けてくれると嬉しい!」
ミオが可愛らしく手を上げてそんなことを言ってきた。こうした場面でミオが意見を言ってくるのは珍しい。
「ミオ?」
「魔眼の悪影響がなくなってマリアンヌは元気になった。人族の寿命は短い!これからの人生は楽しくあるべき!ボクがマスターに出会えたように!」
『お店ではそこまで話しているのを見ていない気もするけど魔眼の治療の時に仲良くなったのかな?』
ミナトとミオに依頼があったのはやはりミナトの強さとミオと仲良くなっていたことが理由のようだ。
『シャーロット?メンバーは大体決まっているって言っていたけど、この部屋にいる五人ってこと?』
ミナトはシャーロット、デボラ、ミオ、ピエールへと念話を飛ばす。
『そうね。今回向かう神聖帝国ミュロンドはスキルや魔法に特権意識を持ち、魔物を目の敵にしている厄介な国……。もちろん力で私たちをどうこうすることはできないわ。でも国や宗教って面倒なことが多いのよね。私は一応エルフだし、デボラとミオの人化の魔法を見破れる者なんていないわ。二人が使う魔法は人族のそれと同じだしね。ピエールちゃんはミナトには不可欠よ。身体の頑健さは人族のままなんだから!』
『ナルホド……』
シャーロットの説明に頷くミナト。
『ナタリアは魔法が使えないしあの武器は目立ちすぎるわ。オリヴィアは攻撃手段として爪を使うから本来の魔物の姿を連想させるでしょ?ロビンも戦闘態勢になったら……、ね?』
確かに三人とも頼もしい存在ではあるが、なかなかに特徴的な攻撃方法を主としていることに思い当たるミナト。
『今回は私たちが神聖帝国ミュロンドへ赴いて、彼女たちには王都の護りとかファーマーと一緒に冒険者の強化とか……、あとお城の探索も進めてほしいわね?』
とびっきりの笑顔でそう言ってくる美人のエルフだが最後の部分に引っかかる。未だお風呂場である筈の温泉郷は探索の途上にあった。自宅に未知の空間があるって……、などと考えてしまうミナトだが、今は依頼のことに集中する。
シャーロット、デボラ、ミオに視線を送るとみんな笑顔を返してくる。グッと親指を立てているミオが可愛らしい。ミナト自身もやはり常連さんのことは助けたい……。神聖帝国ミュロンドという国とは正直お付き合いしたくはないが、異世界探訪として帝都グロスアークという場所には興味がある。さらにジョーナスさんが米や醤油を知っていてほしいという打算もあったりする。そうであるなら……、
「よし……、カレンさん!マリアンヌさん!今回の依頼、受けたいと思います。おれ達『竜を
そう答えるミナト。カレンさんやこの国の重責を担う面々が黙礼でそれに応える。
「ありがとうございます……」
目にうっすらと涙を浮かべたマリアンヌさんが感謝の言葉を返してくれた。お礼は依頼を完遂してからにしてほしいが……。
『それにね!』
片目を瞑りながら悪戯っぽい笑みを浮かべたシャーロットが念話と共に人差し指を立てる。デボラもミオも笑顔だ。
『この前、神聖帝国ミュロンドの帝都グロスアークの場所を地図で教えて貰ったのだけど、あそこって『光のダンジョン』があるのよ!今回はすぐに王都に戻る必要があるし、あそこっていろいろと難しいダンジョンだから、今のミナトでは潜れないかもしれないけど、入り口ぐらいは確認してこようかなって思っているのよね!』
『うむ。今回は見学だろうな!』
『ん。あそこに潜るには今のマスターではちょっと足りないかも……』
『ふよふよ~』
最後の最後で重要な情報を投下する美人のエルフとその仲間たちであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます