第471話 騒動の収束と贈り物
シャーロットの提案に付け加えられてしまったファーマーさんから『
「シャーロット殿からの提案はいったん王城へ持ち帰らせて欲しい」
という言葉にルガリア王国宰相ハウレット=フィルグレイおよびタルボット公爵家当主ロナルド=タルボットが同意したことで終了となった。
同席していた孫であるミリム=ウッドヴィルが後になって教えてくれたが、エルダーリッチのファーマーさんによる魔法講師の件は非常に興味深い内容であったということだ。しかしこの大陸には二千年前に魔王による大戦があったことそれ自体を否定している国もあるらしく、ファーマーが存在するという事実がその国の建国意義を強烈に揺るがし、宣戦布告級に刺激してしまう可能性が考えられるためルガリア王国としては慎重に対応するとのことだった。
保留となったかに見えたシャーロットの提案だが報告会の翌日、冒険者ギルドの受付嬢であるカレンさんから、
「王国は直接関与しないが冒険者ギルドが単独で行う(魔法が使える者を増やす)なら特に問題ない、との国からの内諾は取れました」
という連絡が届く。近くA級冒険者のティーニュとB級冒険者パーティ『
シャーロットがカレンさんに相談したところ二つ返事で請け負ったカレンさんが速攻で王城から許可を得てきた結果とのことである。いったいカレンさんとはどれほどの影響力を持つ人物なのか……、謎がさらに深まったことを感じるミナトであった。
ちなみにザイオン=オーバスに関しては『
そうして禁忌のダンジョン『
そうしてさらに数日……。ルガリア王国の王都では冬の風物詩である冬祭りの準備が着々と進められている頃……。
ここは大陸の西側にあるグランヴェスタ共和国の首都ヴェスタニア。
グランヴェスタ共和国は職人の国。大陸中からドワーフと職人志望の者達が多く集まり、武具、魔道具、宝飾といった様々な分野で優秀な職人を輩出することで知られている。グランヴェスタ共和国にあって首都ヴェスタニアは謂わば職人の総本山。大陸最高の技術を誇る職人たちが日々、切磋琢磨しその技術を磨いていた。
そんな首都ヴェスタニアにおける歓楽街の端に『ドワーフと満月と数多の星々を掬い上げる伝説の盃亭』と書かれた小さな看板を掲げる一軒の酒場兼食堂を見つけることができる。
「ミナト殿!今回はよい仕事をさせて貰った。職人の誇りに!」
そう言ってグラスを掲げるのはシャーロットたちへの贈り物である指輪を作ってくれたヴェスタニアの武具職人であるグドーバル。デザインを担当してくれたドワーフの宝飾職人であるカムシンは、『この仕事で儂は裏方じゃ!』と言い張って欠席していた。
「素晴らしい職人の仕事に!」
間髪を入れずにミナトがそう応えグラスを掲げる。グドーバルの弟子であるケイヴォンとリーファンも果実水が入ったグラスを同じように掲げた。
「「「「乾杯!」」」」
ミナトは常温よりは程々に冷やされたエールを自身の喉に流し込む。
ついにミナトはシャーロットたちへの贈り物を入手できたのであった。
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