第470話 会議は躍る
ミナトの返答を受けたモーリアンは従者を呼び寄せると指示を出して従者を下がらせた。
「三百年前ともなると難しいかもしれんのじゃがファーマーという名のものが王都の商人と野菜の取り引きを行った記録のようなものがないか商業ギルドに確認させる。その正体があの物語に出てくるエルダーリッチということであれば王城にも記録があるかもしれぬのでそちらも確認するつもりじゃ」
そう答えるモーリアン。するとその傍に座るルガリア王国の宰相を務めているハウレット=フィルグレイが、
「それで……、ミナト殿、そうしますと……、やはりそちらの方が……?」
恐る恐るといった感じで視線をメガネをつけたオーバーオール姿のファーマーへと向けつつ問いかけてくる。その顔色はお世辞にも良いとはいえなかった。
『確か宰相さんはおれやシャーロットの本来の魔力を感じることができたよね……。まだきちんと紹介していなかったけど……、流石って感じかな?』
そんなことを考えるミナト。
この報告会では会議の冒頭で出席者の紹介をしているが、ファーマーを含めたF級冒険者パーティ『竜を饗する者』とB級冒険者パーティ『
「そうですね。紹介します。彼がファーマーさんです。今は魔法で人族の姿ですがエルダーリッチで間違い無いですよ?」
ミナトがそう答えると長身痩躯でロマンスグレーモードなファーマーが立ち上がる。ちなみに銃剣は持っていない……、念のため。
「ご紹介さ預がったファーマーだ。かづでは色々どあったがこご二千年ぁダンジョン内で野菜育ででいました。これまではダンジョンの外さ出るごどがでぎねでしたがミナト殿のおがげでこのように地上でも活動するごどがでぎるみでぐなった。ミナト殿がらダンジョン『
ファーマーの挨拶にさらに驚いた表情になるモーリアン、ハウレット、ロナルド、ミリムの四人。冒険者ギルド側のカレンさんも驚いている。
「ミナト様?報告書にも記載されていない内容があったかのように思うのですが……」
王家に連なる知恵者であるミリム=ウッドヴィルが聞いてくる。
「私が説明するわ!」
そういって立ち上がったのは絶世のエルフ……、シャーロットである。
「先ず報告書には載せなかったし今後も情報は国の上層部のみで共有して欲しいけど、今回『
「王都の冒険者では対応が難しいと?」
ミリムの問いを頷いて肯定する美人のエルフ。
「現時点ではそういうことになるわ。そう遠くないうちにティーニュや『
シャーロットにそう言われてティーニュは頷くが『
「彼等はこれからもロビンに鍛えられるからね。私は不可能ではないと思っている」
シャーロットの言葉にカレンさんとミリムが頷いてみせた。
「報告書には異形と化したザイオン=オーバスが最下層に乱入したことのみを書いた。あなた達も情報を掴んでいるでしょうけど、ザイオンが『
シャーロットの言葉にミリムに加えてモーリアン、ハウレット、ロナルドといったこの国の重鎮は表情を変えることはなかったが、
「私たちに嘘も黙秘も無意味よ?」
そう語るシャーロットの身体からゆらりと剣呑な魔力が湧き上がると、
「シャーロット様には敵いませんな……。実は王城の牢から脱獄したザイオン=オーバスが逃げ込んだ屋敷がありまして……。騎士団が踏み込む前に異形の者が屋敷の屋根を破って飛び立ったという報告がありました。恐らく異形と化したザイオンでしょう。屋敷には崩れた魔法陣の一部が残されていましたが、それが
代表してシャーロットの魔力に顔色を悪くしている宰相のハウレットが答えた。
「ロビンは剣技や接近戦は教えられる。だけど魔法での戦い方を教えることができる者は少ない。ファーマーは数少ないその道の専門家なの。これを奇貨として冒険者だけじゃなく魔法使いの実力の底上げも行ったほうがいいわ。ティーニュなんてロビンとファーマーから学べば人族の最高点までは到達できるかもしれないわよ?」
名前を出されたティーニュが今度は驚いたような表情となる。そして『
「いい機会だから王都でも重要な戦力になるあなた達は東方魔聖教会連合について知っていた方がいいわ。カレンさん、お願いできる?」
シャーロットの言葉にカレンさんが同意の意思を示す。
「あの、シャーロット様?こぢらの四人にも僅がんだども魔法の才能がありあんすよ?通常の訓練では難しいんだども
ファーマー言葉にミナトとシャーロットが顔を見合わせ、『
魔法を使えることが特別な才能であるとされているこの世界において魔法が使えなかった『
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