第453話 攻略方針変更!

 囚われし哀れな魂アニムス・ポーパル・カプティブスという現象が支配する空間に生息するかつて魔物であった植物が百体のピエールたちによる酸弾で溶かされる、そして元の魔物としてその体が再構築された後、もう百体のピエールによる酸弾で今度こそ消滅させられる。


 ピエールたちは黙々とそんな作業を繰り返し、ミナトはシャーロットじサポートをして貰いつつコアが仕向けていると思われる襲い掛かってくる生きているかのように動く木製の魔物を短剣で砕き散らし続けていた。最初は木製の狼だったが現在は筋骨隆々のクマ型の魔物になっている。


 ちなみに、


『木彫りのクマ……、サケを咥えていないないから芸術点は減点だな……』


 などと北海道出身のミナトが思っていることは秘密である。


 そうして囚われし哀れな魂アニムス・ポーパル・カプティブスが発生している空間の半分ほどの植物を殲滅したところで、


『マスター!ヨクナイこと発生でス!』


 二百体以上に分裂しているピエールの中の一体がそんな念和を飛ばしてきた。


 これまでよりも一回り大きい木彫りのクマが繰り出す鋭い爪の一撃を紙一重で躱し瞬時に懐に踏み込んだミナトは短剣でクマの五体を粉々に吹き飛ばすと視線を念話が飛んできた方へと向けた。


 シャーロットが、


「剣術なのかどうかも怪しいくらいの攻撃力よね……」


 などと呟いているがミナトの耳には届かなかったらしい。


『マスター!植物ガ……』


 ピエールが説明したいことを瞬時に理解するミナト。ミナトの視線の先ではピエールの酸弾で溶かされた植物が魔物へと姿を変える前に魔法陣が発生し先ほどまで植物だった液状のものをおそらく地上へと転移させていた。


「シャーロット。あれって地上で魔物になると思う?」


「どうかしら?でも今は最悪のケースを考えて行動するべきだと思うわ!」


 シャーロットの言葉に頷くミナト。


「ピエール!念のため確認!植物を酸弾で溶かした液状のやつにさらに酸弾を当てたらどうなるの?」


「検証済みでス!液状では酸弾の効果が発揮されませン。魔物の形になるまで酸弾の効果を受け付けないようでス!」


だからこれ以上は溶かせないなんてことわりとかでもあるのかな?でも状況は理解したよ。それ以上の検証は可能であればあとでやろう!」


 そうしてミナトは新しいプランを伝える。


「ピエール!二百体全員でこの空間の植物を殲滅!地上に転移した魔物に関しては上の冒険者達に一旦任せる!この空間とコアを破壊してダンジョン踏破すれば魔法が使えるようになる。そうすれば転移テレポで脱出できるはずだ!踏破して地上にいる冒険者達の支援に行こう!」


【転移魔法】転移テレポ

 眷属の獲得という通常とは異なる特異な経緯から獲得された転移魔法。性能は通常の転移と同じ。転移元と転移先の双方に魔法陣を設置することで転移を可能にする。転移の物量および対象に関して様々な条件化が全て術者任意で設定可能。設定した条件を追加・変更することも可。魔法陣は隠蔽することも可。


『『『『『承知でス!マスター!殲滅するのでス〜!』』』』』


「シャーロット!サポートをお願いできる?」


「任せて!」


 二百体のピエールが気合を入れてぷるんと揺れ、シャーロットがとびっきりの笑顔でスカートの下から取り出したであろう投擲用のナイフを構えた。


『結構いっぱい攻撃していたけど……、ナイフってスカートに何本隠せるものなんだろう?』


 こんな状況下でふとそんな素朴な疑問を心に抱くミナトであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る